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Sunday, October 13, 2019

ヘリコプター救助中に要救助者が落下 何があったのか詳細に解説します(斎藤秀俊) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

ヘリコプター救助中に要救助者が落下 何があったのか詳細に解説します(斎藤秀俊) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

 東京消防庁ヘリコプター吊り上げ救助中の落下事故で、女性が死亡しました。大変残念です。ご冥福をお祈りいたします。本来、命を救うための救助で何があったか、東京消防庁の記者会見の内容をもとに詳細に解説します。

きっかけは機内収容時か

 本来は救助隊員が要救助者にハーネスを装着した段階で落下はありえません。当然、ハーネスのカラビナをホイストワイヤーに結着してから吊り上げるので、何があってもワイヤーから落ちることがないからです。今回、高さ40 mからの落下だったから、機内収容時の何らかのトラブルかと考えていましたが、東京消防庁の記者会見でそのあたりが明らかになりました。

ハーネスそして収容手順

 ハーネスとは、体を固定する器具です。カバー写真に吊り上げ救助駐機訓練中の様子があります。救助隊員役、要救助者役双方の腰と太腿が固定されているのがわかるかと思います。手前の青Tシャツの人も装着しています。

 機内収容時の手順は次の通りです。ホイストマンと呼ばれる、機内にてホイストクレーンを扱う隊員が地上の隊員のホイスト巻取りサインを見てホイスト巻取りを開始します。そのとき、隊員にも要救助者にもハーネスが取り付けられていて、さらにハーネスがカラビナでホイストワイヤーに結着されています。カバー写真の2人のヘルメットの間にそれが見えます。吊り上げの最終段階がカバー写真のような機内収容です。ここで要救助者が落下する可能性が極めて高くなるので、ホイストのカラビナを解除する前に、ホイストマンが機内カラビナを要救助者のハーネスにまず結着します。次に救助隊員が要救助者のワイヤー側のカラビナを解除します。

 今回は、吊り上げ時にハーネスをつけていて、救助隊員がさらにサバイバースリングと呼ばれる、要救助者の体に巻き付ける輪をかけていたと思われます。カバー写真では救助隊員役のお尻の下の黄色の資機材です。そのため、ホイストワイヤーにカラビナが結着してなくても、吊り上げている最中はスリングの効き目で要救助者が落ちなかったのかもしれません。機内収容時にスリングが緩み、要救助者の体からはずれます。このときに要救助者の体を支持するものが急になくなります。そこでずり落ちたかもしれません。

何が課題か

 東京消防庁では日頃から吊り上げ救助訓練をしています。ただ、連続吊り上げ救助訓練をしていたかどうか。水難学会では以前高知県消防防災航空隊と合同で連続吊り上げ訓練を実施しています。このときの気づきは、2回目、3回目の吊り上げはうまくいった、でも4回目はわからないというものでした。同じ確認作業を災害時に間違いなく何度も正確に繰りかえす訓練が必要なのです。

 プロの救助活動での失敗は死を意味します。これは全国、世界の救助隊員の頭の中にあり、戒めの言葉です。この事故を教訓に全国で連続吊り上げ訓練を実施してください。後ろ向きになり、吊り上げ救助が後退することが決してないようにしてください。航空隊以外にも第三者的に吊り上げ救助訓練について経験・意見をもつ団体はあります。そういう団体との連携を有効に使って、より完璧に近い救助が行われるように最大限の努力が求められます。

さいごに

 吊り上げ救助を推進する立場の筆者としても、未完成な部分が残る救助方法であると、さいごにお詫びいたします。

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2019-10-13 11:54:00Z
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