2021年秋冬コレクション
Image by: JW ANDERSON
「ロエベ(LOEWE)」「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」「ユニクロ(UNIQLO)」とのコラボレーションライン。これらを手掛けているジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は世界で最も多忙なデザイナーの一人に挙げられるだろう。事実、彼のスケジュールはこの7年間、隙間がないほど埋め尽くされていたという。
JW アンダーソン2021年秋冬ウィメンズのコレクション発表の前日、編集部に巨大な筒状の箱が届いた。今回も「collection in a box」の形式で、中に入っていたのは両面印刷された19枚のB1サイズのポスター。裏面までびっしりと文字が詰まったジョナサンからのパーソナルレターも添えられていた。
手紙には今回のコレクションのインスピレーションとなった2人のコラボレーター、マグダレン・オドゥンド(Dame Magdalene Odundo)とシャワンダ・コーベット(Shawanda Corbett)との出会いが綴られている。
陶芸家であるマグダレンとは2017年にジョナサン自身がキュレーターとして携わった展覧会「Disobedient Bodies」をきっかけに親交を深め、体が不自由ながらも独創的な作品を生み出す彫刻家兼パフォーマンスアーティストのシャワンダはコロナ禍でのロックダウンの合間に行われた展覧会でその存在を知ることになった。両者共に体と物質の関係性や、器を物的な媒体とする概念を探究するアーティストという側面に魅かれてコラボレーションが実現したという。
コレクションでは2人との対話や作品を通して体と曲線の関係性を模索。玉ねぎのようなシルエットのボリューミーなニットドレスや、布の重なりがショルダーから前見頃にかけて美しい曲線を描くケープコート、薬玉のように巨大なボンボンのバッグなど実験的なフォルムのピースが並ぶ。それらはユルゲン・テラー(Juergen Teller)によるフォトシューティングによって瞬間的に切り取られ、一つのプロジェクトとして完成する。発表直後、オンラインインタビューに応じたジョナサンは「デザイナーとしてのキャリアの上でも大いに影響を受け、僕自身も収集するほど好きな『陶器』という接点から2人にフォーカスしたかった。ファッションと陶器の関係性を通してボディを語るということを試みたんだ」と話す。
世界的なパンデミックによる行動の制限はジョナサンのようなデザイナーにとって致命的な出来事だった。「僕はこれまで、旅行やレストランやバー、ギャラリーなどの場所を訪れて人に会うことでインスピレーションを得てきた。だから人々の着こなしだったりあらゆる情報源がなくなってしまって、全く違う方法でリサーチしなくてはならなかったのは劇的な変化と言えるだろうね」。
クリエイターとして厳しい状況下でどのようにファッションへの熱を持ち続けていたのかと尋ねると、「新しい人になかなか会う機会がない分、今まで知っている人をより知っていくことであったり、これまで忙しすぎてできなかった読書をしたり。なにせ、ずっと家にいるからね。これまでに知っていたモノやコト、ヒトをさらに研究することで、何かしらの対象に関心を持ち続けていた気がする」と語り、そんな中でジョナサン曰く「最もパーソナルなプロジェクト」となったのが、今回のコレクションだった。
「いつも以上に時間をかけたし、僕だけではなく今はみんながとてもエモーショナルな時間を過ごしていて、日記を見返すようなセルフリフレクションの日々だった。僕が夢中になっていることを形にしたからとても正直なものでもある。もちろん物理的な意味でもコレクションを作るのが難しかったからね。そういった意味でも思い入れが強いパーソナルなコレクションになったんだと思う」。
最後にステイホームでのお気に入りの過ごし方を聞くと「キッチンに座って馬鹿げた突拍子もないリサーチで時間を潰して迷子になることかな(笑)。例えばイギリスのカントリーハウスで、人々がどうやって家の中にステータスを持っているのか、家具職人や煙突職人、大工についてとか......。この数週間で40冊近い本を買っちゃって本のパイルに囲まれて今日も朝を過ごしたよ。何かのクリエイティブに繋がれば良いけど、そうでないかもしれない。過去7年間の僕のスケジュールはクレイジーなほど忙しかったけど、今はまた別の忙しさを経験しているってわけさ。いつもとは違う方法で自分を満たしているよ」と茶目っ気を交えて話してくれた。このキッチンテーブルで生まれたアイデアが形になり、日の目を浴びる日は遠くないかもしれない。
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