今冬の電力需給も、昨冬に続き厳しい状況にある。平均気温が例年より1―2度C下がった場合、電力予備率は最低限必要な3%台の地域が増えてくる。「昨年並みの寒い冬でも3%は確保できるが、心配は設備トラブル」と電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は懸念を示す。大型発電所が停止すれば、危険水域に近づく。産業界は省エネの徹底に加え、自家発電設備を保有する企業には、できる限り利用することが求められる。(編集委員・板崎英士)
全国の電力需給を監視し事業者間の融通を調整する国の機関、電力広域的運営推進機関(広域機関)がまとめた2021年度冬季(12―2月)の電力需給見通しによると、12月は全国10地域すべてで予備率9%以上が確保できる。ただ1月の東京と、2月の北海道、東北、沖縄を除く7地域では3%台まで下がるとみる。2月の東京が最も厳しく3・1%。過去10年で最も厳しい状況だ。東京電力パワーグリッド(PG)は1、2月の東京エリアで供給力の追加公募を行い、JERAの姉崎火力発電所5号機が60万キロワット弱を落札した。4月から長期計画停止中の液化天然ガス(LNG)火力がバックアップする。
昨冬、低気温と世界的なLNGの不足により電力需給は逼迫(ひっぱく)した。その経験から、国はいち早く対策に乗り出している。広域機関と連携し、実際の発電電力量(キロワット時)のモニタリングや発電能力(キロワット)予備率の情報に加え、連携線の状況なども細かく公開する。10月21日には電力・ガス需給とLNG調達に関する官民の連絡会議を初めて開催し、燃料調達の体制を確認した。
日本ガス協会の本荘武宏会長は「万が一の場合、可能な限り協力する」とする。電力会社には電源設備の補修時期をずらし、12―2月に最大限稼働できるよう要請した。
こうした供給側の対策で3・5日分の余力とされる予備率3%台は一応、確保できるとするが需要側の対策も重要だ。自家発電設備を持つ企業は、需給逼迫時には計画以上の発電を行うことが求められる。電力会社やアグリゲーターとのデマンドレスポンス(DR)契約も有効な手段だ。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を駆使し電力需要を効率的に下げることでインセンティブが得られるDRは、経費削減のメリットも大きい。
電力会社以外の企業が保有する自家発電設備のうち、発電能力1000キロワット以上の火力発電だけで全国に約2000カ所あり合計出力は2000万キロワットを超える。50万キロワットの火力発電40基分に相当する。国は大手電力会社に対し、これらを保有する事業者をリスト化し、緊密に連絡を取るよう求めている。
また自家発電を持つ事業者にはDR契約や、大手電力からの調整力公募への対応、卸電力取引所に積極的に電力を供出するよう依頼した。こうした際のルールやインセンティブを明確化して稼働率の低い自家発電を有効に活用することは、新たな投資をせずに電力需給を改善できる有効な手段となる。
日刊工業新聞2021年10月28日
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