エンゼルス大谷翔平投手(27)が受賞ラッシュの「賞タイム」を迎えています。すでに「ベースボールダイジェスト」、「ベースボールアメリカ」、「ザ・スポーティング・ニューズ」という米主要3誌の年間最優秀選手、さらにコミッショナー特別表彰、大リーグ選手会主催の年間最優秀選手とア・リーグ最優秀野手で「6冠」に輝いており、タイトルは2ケタに届きそうな勢いです。

そして、最大の注目は今月18日(日本時間19日)に発表されるア・リーグMVPです。何しろ、大リーグで最も古く名声があるタイトルで、昔から選手たちにとって最高の栄誉とされているからです。

MVP(Most Valuable Player)は1911年に始まり、当時は自動車メーカー創業者の名を取って「チャルマーズ賞」と呼ばれ、ア・リーグの初代受賞者はタイ・カッブ(タイガース)。7年の中断を経て1922年に「リーグ賞」と呼称を変えて再開。1931年からMVPの名で定着します。過去に日本選手では、渡米1年目に首位打者と盗塁王に輝き、史上2人目の新人受賞となった2001年のイチロー(マリナーズ)しかいません。

これは全米野球記者協会(BBWAA)による記者投票で1都市2人ずつ、ア、ナ両リーグとも15球団ずつなので、30人の記者による10人連記制です。得点は1位14点、2位9点、3位8点、4位7点、以下10位1点まで。日本プロ野球はセパとも、300人前後の記者投票で決まることを考えても、1票の重みは別格です。投票者は取材経験などからBBWAAから指名され、選ばれることが名誉となります。

投票はすでにレギュラーシーズン終了直後に締め切られています。というのも、MVPは公式戦162試合の成績を対象にしたもので、プレーオフやワールドシリーズの成績は加味されません。

また、各記者の投票内訳も明らかになります。たとえば昨年、ナ・リーグMVP投票で救援投手のライアン・テペラ(当時カブス、現ホワイトソックス)に10位票が入って騒然となりました。なぜなら、テペラは21試合に登板して0勝1敗、防御率3・92という平凡な成績。「ありえない」1点が入ったからです。

投票したのは、カージナルスの地元紙セントルイス・ポストデスパッチのリック・フンメル記者と判明。本人いわく「トレイ・ターナー(当時ナショナルズ、現ドジャース、最終結果は7位)を投票するつもりが、ドロップダウンリストから違う名前をクリックした」と釈明。まさかの投票ミスで謝罪する事態に発展しました。それだけ記者の責任も重いわけです。

また、日本では優勝チームからMVPがほぼ選ばれるのに対し、大リーグでは必ずしも優勝チームに限らず、最下位チームからの選出もあります。それでも、最近は優勝、もしくはワイルドカード(WC)争いするチームから選出される傾向にあるようです。エンゼルスは今季、WCにも絡めず借金8の西地区4位に沈みましたが、大谷は果たして-。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)