北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第56回は、日本に暮らす最大のフクロウ、シマフクロウの勇姿をお届けします。
北海道では、森の守り神と言われているシマフクロウですが、今や、絶滅の恐れが最も高い絶滅危惧種ⅠA類に指定されています。
圭さんも、撮影するときは十分に距離をとって、大玉の望遠レンズで狙い、フクロウの縄張りを脅かさないよう配慮しています。
写真・文/佐藤圭
【画像ギャラリー】圧倒的な存在感を放つシマフクロウの眼光超低重音でボンボンボンと鳴く巨鳥
アイヌの人々の言葉「カムイ」は、日本語では「神」と訳されますが、仏教やキリスト教、イスラム教でいう「神」とは違って、人間の周りに在る様々な物、事、生き物などのうち、人間に強い影響を及ぼすものを「カムイ」と呼んだそうです。
それは、人間が遠く及ばない力だったり、人間に恩恵をもたらしてくれるもの、災いをもたらすものなど、さまざまなカムイがあります。
僕が住む留萌にも、神居岩(かむいわ)という地域があり、カムイと名前がついています。
由来は定かではありませんが、温泉が湧き出る所なので、アイヌの人々は何か畏怖を感じたのかもしれません。大きな岩の間から熱い湯が吹き出し、驚愕したので、カムイの岩=カムイワと呼んだのかもしれません。
神居岩の読み方は、地元の人でも、カムイワ、カモイワ、カムイイワとさまざまです。面白いですね。
僕が出会った野生動物の中で、最もカムイを感じたのは、村を守る神とされるコタンコロカムイ=シマフクロウです。
日本では、北海道にだけ生息し、限られた森にしかいない稀少なフクロウです。
眼光鋭く、超重低音でボンボンボンと鳴きます。体は翼を広げると180cmと大きく、オオワシ、オジロワシなみに迫力があります。
魚が豊富なきれいな川、巣にできるような大きな木がある森がなければ生きていくことができません。
しかも、ペアで一つの小川を縄張りとして、他のペアと縄張りを共有することはないので、シマフクロウたちが生きていくためには、広大で豊かな自然が必要です。
明治以降、徐々に開発が進み、シマフクロウの生息地の多くが消えてしまい、今では、全道でも生息数は約160羽となってしまいました。
一見、豊かに見える北海道の自然ですが、シマフクロウが暮らしていくには、もうぎりぎりの状態だとも言えるのです。
アイヌの人々は、彼らが暮らす森の豊かさの象徴とてして、シマフクロウをカムイと名付けたのでしょう。
彼らの思いを受け継いで、北海道の豊かな自然を守っていきたいと考える人が一人でも多くなってほしいと思っています。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
インスタグラム:https://www.instagram.com/slashslash_photography/
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