ジェトロは、2010年から日本産酒類の輸入販売を行う大連滴水貿易の常松総経理に、新型コロナウイルス感染終息後の市場の変化や同社の調達戦略などについて話を聞いた(11月26日)。同社は、日本酒とリキュールを中心に取り扱っており、主要販売ルートは、中国・東北3省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)と内陸部の2級都市以下の日本料理店、スーパーマーケット、電子商取引(EC)サイトなどだ。
(問)新型コロナウイルス感染拡大による事業への影響は。
(答)日本産酒類の売り上げは2019年までは順調に伸び、2010年の10万元(約180万円、1元=約18円)から、2019年は240万元までに拡大した。2020年と2021年の売り上げは2019年と同水準を維持している。
販売ルート別の売り上げについては、日本料理店は減少、スーパーは横ばい、ECは拡大傾向にあり、足元においてはECの売り上げが全体の約5割を占めている。日本料理店など日本人を主要ターゲットとする店舗では、日本人出張者や観光客の減少に伴い、販売が減少している。ECは今後も伸びる可能性が高いルートだ。主要ターゲットは若年層で、若年層向けの商品選定が重要となっている。
(問)日本酒に対する中国人若年層の嗜好(しこう)の特徴は。
(答)個人差はあると思うが、パッケージなど商品の見た目が購入時の最も重要なポイントといえる。その他の点では、話題性、味、価格が重視される。中国で日本酒を取り扱うスーパーの売り場に行くと、大同小異で地味なパッケージの商品が多く、すぐに目を引くものが少ない。そのため、シンプルすぎず、日本風の要素や、中国人でも分かりやすい漢字を使用するなどの工夫をするとよいだろう。また、和紙のラベルを使用すると、日本のイメージを表現できる。話題性とは、消費者を引き付けられる、商品やブランドにまつわる内容を指し、販売時に面白いストーリー性を導入すると宣伝しやすい。
また、新型コロナウイルス感染拡大以降、日本への渡航が困難となり、小紅書(RED)やTikTokなどのSNSを通じて日本商品の知識を得る若年層が増加している。それまで特に売れていなかった商品がSNSにより急に爆発的に売れたケースもあり、SNSを活用した宣伝が重要だ。
(問)「新型コロナ禍」における日本企業との取引の課題は。
(答)直接かつ即時に商品に触れることができないことが最大の課題だ。オンライン商談を通じて取引価格などの諸条件が合う商品に関しては、日本からサンプルを送ってもらうが、写真と実際に見た印象が異なることや、味が期待値を下回ることがある。また、サンプルの輸送に時間がかかり、新型コロナウイルス感染拡大前に比べて商談が長引くことも課題だ。
(問)貴社の今後の調達戦略は。
(答)日本酒とリキュールを中心に、若年層向けの商品の選定や市場開拓を強化していきたい。若年層の特徴は新鮮さを求める点であり、供給側も絶えず新しい商品を探さなければならない。日本では中小企業でも数百年の歴史を誇る企業が多く、今後も中小企業との取引を重視していきたい。
一方、これまで数多くの中小企業と商談をしてきたが、中国人消費者の嗜好に合わせて柔軟に商品開発ができる企業は少なかった。また、中国で幅広く認知されていない商品については、当社とともに、中国でのプロモーション活動を頻繁に行う必要がある。中国市場の開拓に積極的な日本企業との連携を希望している。
(呉冬梅)
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