「SNSこちら編集局」(S編)に、背丈ほどある見事な黒髪の少女の写真が送られてきた。聞けば、近く生まれて初めて髪を切り、病気などで髪を失った子どもに医療用ウィッグ(かつら)を無償提供する「ヘアドネーション」に協力するという。人生初の「散髪」に同行取材した。
3日午後4時、合志市の美容室「ヘアーショコラ」を武蔵小5年の古田育実[はぐみ]さん=熊本市北区=が訪れた。148センチの身長に対し、髪の長さは約130センチ。緊張した様子で椅子に座る。
母の美幸さん(45)と父の卓さん(44)が見守る中、美容師の高橋佳久さん(42)がはさみを入れた。ゴムで縛った髪が一束ずつ丁寧に切られていく。両親から「わー、育実じゃないみたい」と驚きの声が上がった。
育実さんは生まれてすぐに百日ぜきにかかり、何度も呼吸が止まり、一時は命の危険もあった。酸素吸入など適切な処置で無事、退院。「長生きできるように」と願いを込めて髪を伸ばし続けてきた。今や、そんな心配もすっかり不要になった。
古田さん一家がヘアドネーションを知ったのは約5年前。毎日30分かけて髪を乾かすなど大変な面もあったが、協力して手入れしてきた。育実さんは1メートル以上の髪を寄付するが、母の美幸さんは「(髪の長さをそろえる必要があるため)一つのウィッグをつくるのに約50人の髪が必要なことを多くの人に知ってほしい」と呼び掛ける。
髪の寄付先は大阪市のNPO法人「JHD&C(ジャーダック)」。法人からのウィッグ提供を待つ人は約250人に上る。一方で髪は全国から年間10万件以上届くが、長さによって作れるウィッグは違う。特に最長となる60センチ以上のタイプは貴重で全体の3%ほど。育実さんの髪はこのタイプに使われる見通しだ。
法人の担当者は「協力しようにも諸事情で髪を伸ばせない人もいる。男性の場合などは周囲の理解が十分とは言えない」。法人は2020年7月から寄付金の募集も開始、支援の裾野を広げようとしている。
はやりのボブスタイルに仕上がった育実さん。少し照れくさそうな表情で、きれいに切られた髪を手に「早く必要とする人たちに届けたい」とほほえんだ。(岡本遼)
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