沖縄県の宮古島付近で6日に10人が搭乗した陸上自衛隊UH60JAヘリコプターが行方不明となった事故。同型機の操縦経験がある陸自OBは「非常に信頼性が高い機体だ。一体なぜ事故が起きてしまったのか…」と語り、肩を落とした。
UH60JAは米ロッキード・マーティン傘下のシコルスキー・エアクラフト社製多用途ヘリを自衛隊仕様にした機体だ。このOBは「飛行に必要な機器が二重に用意されるなどトラブルへの備えがある。同型機は世界各国で採用されているが、重大な故障による事故は、これまで聞いたことがない」と解説する。
当日の飛行についても「着任されたばかりの師団長が現場の状況を確認するためのものだろう。実戦を想定するといった特別に厳しい状況とは考えにくい」とみる。
過去の航空機事故では、パイロットが機体の姿勢を錯覚する「空間識失調」に陥ったことが原因となったケースもあった。
錯覚は気象条件などから水平線や地平線が確認できない場合などに起きがちで、このOBも飛行中に軽い空間識失調に陥ったことがあると明かす。事故防止策として重要なのは、計器類に基づいた操縦をするなどして自身の感覚のずれを直すことだ。
OBは「パイロットなら誰でも経験があるはずだ」とした上で、「われわれ自衛官は空間識失調への対処訓練を積んでいる。また、UH60JAは機体の姿勢を示す計器の視認性が高い。計器のみによる飛行訓練も積んでいた」とも強調する。
今回の事故について、このOBは「ヘリは島の近くを昼間に飛行していた。気象条件も問題なかったとみられる。陸上よりも難しいとはいえ、海と空のコントラスト差は認識しやすいだろう」として、空間識失調以外のトラブルによる可能性を指摘した。
原因究明について「機体を引き上げればある程度の状況は分かる。それを待つしかない」と語り、こう続けた。「同じ自衛官として、とにかく1人でもいいから無事を祈るしかない。今はそれだけだ」。
陸自ヘリ事故 周辺の空港管制で救難信号受信せず 不明の10人捜索続く
2023-04-08 05:11:42Z
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