主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相は16日の札幌市での会合で、二酸化炭素(CO2)削減への対策を講じていない化石燃料の使用の廃止に向けた取り組みを強化することで合意した。新たに天然ガスを対象に加え、段階的な廃止に着手する。欧州とカナダが求めていた石炭火力発電所の廃止時期の明記は見送った。
日本が議長国を務め、15日から2日間の日程で協議した。16日に共同声明を採択して閉幕した。
共同声明に「未対策の化石燃料の段階的廃止を加速するという世界的な努力の文脈でコミットメントを強調する」と記した。従来は段階的廃止の対象を石炭に限っていた。今回は「化石燃料」とし、天然ガスなどに広げた。石炭火力の廃止時期の明示は日本が反対していた。
温暖化ガスの排出削減に関して、2035年までに「19年比で60%減」とする目標数値も盛り込んだ。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は産業革命前からの地球の気温上昇を1.5度以内に抑えることで合意している。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月に実現には35年の温暖化ガスの排出量を19年比で60%減らす必要があると示しており、これに準拠した。
自動車から出るCO2を巡っては、G7各国が保有する車からの排出量を35年までに00年比で半減できるよう留意するとした。毎年進捗を確認していくことで合意。米英などは明確な目標を求めていたが、一定の柔軟性がある表現にとどめた。
再生可能エネルギーの導入目標も新たに打ち出した。洋上風力発電を30年までに7カ国合計で1.5億キロワットに引き上げるとした。21年実績の約7倍に増やす。太陽光は30年までに10億キロワットとし、現状の約3倍に増強する。
電気自動車(EV)の電池などに欠かせないレアアース(希土類)など重要鉱物ではG7と資源国が連携し、安定した供給網を構築することを盛り込んだ。G7として130億ドル(約1.7兆円)を財政支出し、鉱山の共同開発や使用済み製品から回収・再利用する取り組みを推進する。
海洋プラスチックごみによる新たな汚染を40年までにゼロにする目標でも合意した。
原子力の活用は「原子力エネルギーの使用を選択する国々」と一部の国に限定したうえで「世界のエネルギー安全保障を確保できる手ごろな価格の低炭素エネルギーを提供する可能性を認識している」と表現した。
西村康稔経済産業相は会合後の記者会見で「世界中の国々にはそれぞれの経済事情やエネルギー事情がある。カーボンニュートラルへの道筋は多様であることを認めながら、共通のゴールであるネットゼロをめざすことが重要であると確認できた」と述べた。
会合には日本から西村氏と西村明宏環境相が出席。米国のジョン・ケリー大統領特使、カナダのウィルキンソン天然資源相、インドネシアのアリフィン・タスリフ・エネルギー鉱物資源相らも参加した。
2023-04-16 07:47:20Z
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