先進7か国首脳会議(G7サミット)のメンバーによる広島平和記念資料館への訪問は、岸田首相の強い思い入れで実現した。ロシアのウクライナ侵略で核兵器使用の懸念が高まる中、被爆の実相に触れてもらうことは不可欠と考えたためだ。現職の米国大統領としてバラク・オバマ氏が広島を初めて訪問してから7年を経て、被爆地の歴史に新たな一歩が刻まれた。
首相は19日午前、広島市の平和記念公園で、バイデン米大統領ら各国首脳らを順番に出迎え、その後、資料館に入った。
首相は昨年5月、自身の地元でもある広島市でのG7サミット開催を決定して以降、平和記念公園訪問の調整を慎重に進めてきた。地元からは、原爆死没者慰霊碑への献花だけでなく、資料館の視察や被爆者の証言を聞く機会を設けることが欠かせないとの声が寄せられていた。
広島市の松井一実市長は「各国の首脳が安全保障を考える時、核兵器が使われてしまうと、どうなるのか。資料館を見る前と後では違う」と強調。首相も「世界のリーダーに被爆の実相に触れてもらうことが重要だ」と繰り返し発信してきた。
ロシアはウクライナ侵略以降、核兵器の使用をちらつかせ、核による威嚇を強めている。核保有国である米国、英国、フランスには「米国が原爆を投下した過去への注目が高まれば、ロシアに利用されかねない」との警戒感もあった。
外務省が水面下で資料館訪問を提案したのに対し、各国から前向きな反応が得られて以降も、視察の具体的な内容や滞在時間を巡ってはやりとりが続いた。日本側には「オバマ氏の訪問時より、しっかり見てほしい」(首相周辺)との思いがあった。
オバマ氏が2016年5月に広島を訪問した際は、資料館の滞在時間は約10分にとどまった。報道陣に公開されず、同行者によると、東館1階ロビーに運び入れた被爆遺品やパネルの一部を見学しただけだった。「核兵器のない世界」を掲げていたオバマ氏であっても、「原爆投下によって、より多くの命が救われた」と主張する米国内の保守派や退役軍人らの反発を考慮する必要があった。今回の訪問はオバマ氏の時よりも滞在時間は長かったが、米国などの意向を踏まえ、資料館内の取材は許されなかった。
2023-05-19 04:47:00Z
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