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Friday, August 25, 2023

中国が水産物禁輸で報復、福島第一原発の処理水放出が生み出した論争 - BBCニュース

中国が水産物禁輸で報復、福島第一原発の処理水放出が生み出した論争 - BBCニュース

テッサ・ウォン、アジア・デジタル記者、BBCニュース

Police officials detain university student protesters as they try to enter the Japanese embassy amid a rally in Seoul, South Korea, 24 August 2023

画像提供, EPA

日本は24日、福島第一原発の処理水を太平洋に放出する作業を開始した。アジア・太平洋地域からは抗議の声が上がり、特に中国は報復措置に踏み切っている。

中国はこの日、日本産水産物の全面禁輸を発表した。日本にとって中国は、水産物の最大の輸出先。

日本政府は、処理水は安全だとしており、多くの科学者が賛同している。国際原子力機関(IAEA)も、放出計画を承認している

一方で、さらに研究が必要だ、放出は停止されるべきだとの意見もある。

計画では、原発に貯められている100万トン以上の処理水が、これから30年にわたり放出されることになっている。

2年前の計画発表以来、最も声高に反対してきたのが中国だ。放出は「極めて利己的で無責任な行為」で、日本は「人類の未来の世代に傷口を広げている」と述べた。

その直後、中国の税関当局は、福島県や周辺地域にの水産物に課していた禁輸措置を、日本全土に拡大すると発表。「中国の消費者の健康を保護するため」としている。

この措置は経済的損失を与えるためのもので、日本も水産業に「甚大な」打撃があると認めている。中国と香港は毎年合わせて11億ドル(約1600億円)相当の水産物を日本から輸入している。これは、日本の水産物輸出の半分近くに相当する。

「政治的な動機も」と専門家

しかしアナリストらは、特に中国からのこうした反応は、海洋放出への純粋な懸念によるものであると同時に、政治的な動機も同じくらい含まれていると指摘する。

日中関係はここ数年、悪化の一途をたどっている。アメリカにますます接近し、歩調を合わせる日本は、中国が領有権を主張する台湾への支持を表明している。

アジア・ソサエティー政策研究所の中国外交政策専門家、ニール・トーマス氏は、「今回の出来事は、日中関係悪化の原因というよりも、日中関係悪化による症状だ」と述べた。

「日本との関係が良好だったなら、中国も海洋放出をここまで問題視しなかっただろう」

一方で、日本はおそらく「批判を否定するだろうが、挑発的な行動に出る可能性は低い」と、テンプル大学ジャパンキャンパスのジェイムズ・DJ・ブラウン教授(日本外交政策)は指摘する。

「日本政府は、中国共産党の攻撃的な行動と見る対応を憂慮しているが、大きな隣国との安定した関係を維持することが国益になることも理解している」

そう長くはかからないかもしれない。一部のオブザーバーは、中国が禁輸を続けないかもしれないと述べている。

前出のトーマス氏も、「中国で経済状況の悪化が広がる中、中国の輸入業者や企業景況感などへの悪影響を抑えるため、あらゆる禁輸措置は比較的、短期間で対象も限定的なものになる可能性がある」と述べている。

An aerial view shows the Fukushima Daiichi nuclear power plant, which started releasing treated radioactive water into the Pacific Ocean, in Okuma town, Fukushima prefecture, Japan August 24, 2023, in this photo taken by Kyodo.

画像提供, Reuters

韓国も長らく、日本の一部の水産物輸入を禁止している。しかし24日の海洋放出開始を受けた反応は、中国より静かだった。

韓悳洙(ハン・ドクス)首相は、「今重要なのは、日本が国際社会に約束したように、科学的基準を厳格に守り、透明性をもって情報を提供するかどうかだ」と述べた。

日本と韓国には歴史的な深いあつれきがあるものの、外交関係を深めつつある。北朝鮮と中国の脅威を前に、アメリカを含めた関係で団結している。

しかし、多くの韓国人が処理水の放出に反対している。24日には首都ソウルで、抗議者らが日本大使館に突入しようとする騒ぎがあった。香港や東京でも、抗議集会が開かれた。

太平洋側では、太平洋諸島フォーラム(PIF)の議長を務めるクック諸島のマーク・ブラウン首相が、「放出が国際的な安全基準を満たしていると考える」と声明を発表した。PIFは6月には、日本の放出計画が核廃棄物の処分を検討している他の国々にとって危険な前例となると表明していた。

環境への影響は「無視できる程度」

2011年の東日本大震災による津波で福島第一原発が破壊されて以降、オペレーターの東京電力は原子炉の燃料棒を冷却するため、水をくみ上げ続けている。そのため、同原発では毎日、汚染水が発生しており、巨大タンクに保管されている。

東電は福島第一原発の汚染水を多核種除去設備(ALPS)でろ過し、トリチウムと炭素14以外のほとんどの放射性物質を、許容できる安全基準まで減らしている。ろ過された水は、さらに海水で希釈されてから海に放出される。

これまでに1000基以上のタンクが満杯になっている。日本はこの措置について、持続可能な長期的解決策ではないと説明。処理された水は安全だと主張している。

多くの科学者が安全だと述べている。国際原子力機関(IAEA)も報告書で、計画は国際基準を満たしており、環境に与える影響は「無視できる程度」だとした。

当局は、海の放射線レベルを継続的に観測し、高い透明性を維持して計画を進めると約束している。

しかし、東電の過去の行動から、この説明に懐疑的な見方もある。同社は福島第一原発の事故をめぐり、不透明な対応で非難された。同社はこの事故について謝罪している。

また、原発が処理水を海洋放出するのは一般的なことだが、福島第一原発から放出される量は前例のない大規模なものだと指摘する声もある。

科学者の中には、海底や海洋生物にどのような影響を与えるか、もっと研究を進めるべきだと言う者もいる。環境保護活動団体グリーンピースは、より優れた処理技術が発明されるまで、水をタンクに貯留するよう求めている。

この計画に特に怒っているのは、日本の沿岸地域コミュニティーと漁業者だ。2011年の震災以来、経済的に完全には回復していない同地域の水産物を避ける消費者がいることを懸念し、自分たちの生活が心配だと訴えている。

それ以外の日本全般の世論も、この問題について割れている。最新の世論調査によると、放出を支持する人は半数にとどまっている。

東京で放出に対する抗議活動を行った女性は、ロイター通信の取材に対し、「海洋放出以外の、他の方法がたくさんあるはずだと思う」と話した。

「なのに政府は放出を選んで、世界に問題を引き起こした。まったく受け入れられない」

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2023-08-25 03:34:09Z
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