岸田文雄首相(自民党総裁)が、自ら率いた同党岸田派(宏池会)の解散を決断したのは、パーティー収入不記載事件で国民の政治不信が高まる中、派閥の存続は自民政権の崩壊につながりかねないとの強い危機感を抱いたからだ。首相は昨年末から派閥解消を探っていたが、消極的な党幹部には相談せずに腹案として温め、電撃的な表明で強行突破を図った。決断の経緯を振り返る。
「いろいろと批判されることは分かっている。でも、何もしなけりゃ自民党は終わりだ」。首相は表明直後の18日夜、周囲に心境を漏らした。
首相は昨年末、最大派閥・安倍派(清和政策研究会)などへの捜査が本格化したころから、派閥解消の案を練っていた。「国民から派閥が金やポストを求める場となっているとの疑念の目が注がれている」(首相)以上、その在り方を抜本的に変えなければ、党の存続も危うくなるとの危機感があったからだ。
そんな首相の思いが党幹部に共有されていたとは言い難い。首相は昨年12月に岸田派を離脱したが、派閥領袖(りょうしゅう)である麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長らは同調しなかった。このころ首相周辺は「派閥は解消しなければならないが、麻生氏と茂木氏による岸田降ろしに発展しかねない」と運びの難しさを語っていた。
ただ、年が明けて自民の政治刷新本部の議論が始まると、若手からも派閥解消論が公然と噴出した。首相は背中を押されるように、自らの確信も深めていった。
「(各派閥が同一選挙区に候補を擁立した)中選挙区時代は同じ自民でも派閥が違えば会話することもなかったが今はそうではない。昔ほど派閥は絶対じゃない」
今月中旬、首相がそう漏らすのを聞いた側近の一人は「あれで首相は派閥解消をやるんだなと確信した」と明かす。
首相も個々の派閥の在り方に直接、関与できる立場にはなく、まずは自らの本気度を示す必要があった。18日午後、官邸にひそかに岸田派幹部を呼び寄せ、同派解散の意思を伝えた。一人一人に「後ろ向きではなく、攻めのための解散だ」とも訴えた。
党内には不意打ち的な表明に反発も広がるが、首相は周辺にこう語る。
「俺はこれが正しいと信じる」(永原慎吾)
2024-01-20 01:09:00Z
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