一本の記事が大きな反響を呼んでいる。神戸市の元幼稚園教諭の女性(22)が昨年、介護していた祖母を殺害し、執行猶予判決を受けた事件。女性の裁判や関係者への取材を重ねて背景を掘り下げた記事が毎日新聞のニュースサイトに掲載され、感想や意見が続々と寄せられている。
女性は許されざる罪を犯した。しかし、親族たちの協力を得られず、孤立無援で極限状態に追い込まれていた。ジャーナリストの江川紹子さんに事件の意味と、報道の役割を聞いた。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】
事件の概要はこうだ。女性は昨年10月、神戸市の自宅で、同居する認知症の祖母(当時90歳)の口にタオルを押し込み、窒息死させた。殺人罪に問われ、今年9月、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)の判決が言い渡された。
事件発生時の初報は、兵庫県の地域版にベタ記事(1段見出しの記事)で掲載された。一見ありふれた事件で、通常のニュース判断だった。しかし、神戸地裁で公判を傍聴した記者が背景に関心を寄せた。
近所に親族が住んでいるにもかかわらず、女性は仕事をしながら祖母の介護をほぼ一人で引き受け、1日2時間程度の睡眠しか取れない過酷な生活を続けていた。祖母と女性はどんな関係だったのか、なぜ女性一人に介護の重い負担がかかったのか、親族はその状況をどう思っていたのか――。記者たちは関係者や親族を訪ね、話を聞く地道な作業を続けた。ニュースサイトに載せた記事は約4000字の長文になった。
江川さんは、若い世代に高齢者介護の負担がのしかかる構図を指摘する。「介護、特に家族の中でも子供に介護の負担がかかるヤングケアラーの問題は幅広い世代に関心のあるテーマ。子供ではないが、成人して間もない若い介護者による殺人事件にまで発展しました。記者たちは、裁判の傍聴だけでなく、当事者の親族らにも取材して事実に迫ろうとしており、いろんな世代、いろんな立場の人たちに考える材料を提供し、問題提起しています」
その上で、江川さんは、女性の過酷な生い立ちや家族関係に注目する。「この事件は、女性の置かれた特別な立場や複雑な人間関係が鍵を握っています。裁判では、介護の態勢を巡り女性の叔母とケアマネジャーの証言が食い違っていました」
SNS上では、女性一人に介護を任せていた親族らを非難する声も目立った。江川さんは「つまり女性がかわいそう、という同情ですよね。ただ同情だけでいいの…
2020-10-30 13:24:41Z
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