新型コロナ禍に苦しむ企業の資金需要が旺盛である一方、疲弊した経済環境が自社株買いの正当化を難しくさせていることが、株式市場の需給をゆがめている。このことが、年末に向けて強気派の懸念材料になっている。
米企業は例年であれば、売り出すよりも格段に多くの株式を買い戻す。しかし今年は違う。 スノーフレイクや ワーナーミュージック・グループなどの一連の新規株式公開(IPO)で市場には株式があふれた。また、航空会社やクルーズ船運航会社など、新型コロナ禍で最も打撃を受けた企業は資金調達とバランスシートの強化を急いでいる。
インフォーマ・ファイナンシャル・インテリジェンス傘下のEPFRがまとめたデータによると、企業が2020年に発表したIPOや株式売り出しを通じた資金調達額は約5100億ドル(約53兆円)と、前年比50%増となっている。この数字は2009年の危機以降で初めて、企業が自社株買いや買収で消却するとした株式の額に並ぶ。過去10年では、調達額1ドルに対して平均3ドルの自社株買いが行われていた。
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出典:EPFR
シュワブ・センター・フォー・ファイナンシャル・リサーチのトレーディング・デリバティブ担当バイスプレジデント、ランディ・フレデリック氏は、現在のリスクオン環境の下、企業の資金需要は「もはや妥当とは言えない株高をもたらす一因だ」と指摘。 「それだけで相場を下落させるとは言わないが、横ばい推移をもたらしたり、一段高を抑えたりする可能性はある」と述べた。
確かに今のところ、自社株買いの減速が相場上昇を妨げている兆候はない。ヘッジファンドから個人投資家に至る市場参加者が一斉に買いに動く中で、11月の株式市場は過去最高となる5兆ドルの拡大となった。また、ワクチンを巡る明るいニュースが自社株買い再開に向けた動きを促す可能性もある。
しかし、株式市場での供給の急増は過去、最高値水準にある相場を圧迫してきた傾向がある。
また、IPOブームは市場の力強さを裏付けるものだが、一方で高い株価は、自社株買いを正当化するには高過ぎる水準までバリュエーションが上がっていることも示す。S&P500種株価指数構成銘柄の株価収益率(PER)は22倍と、ドットコム時代以来で最も高い水準に近づいている。
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ブルームバーグがまとめたデータによると、今年の米取引所への株式上場による資金調達額は1500億ドルを超えるが、その約半分は特別目的買収会社(SPAC)を介したものだ。
ナショナル・セキュリティーズのチーフ市場ストラテジスト、アーサー・ホーガン氏は、過去に見られたように投資家が手のひらを返すように慎重になる段階にはまだ至っていないとしながらも、「取引の数は歴史的な水準になっている」と指摘。「上場すべきではない企業が上場しており、転換点は常にある」と述べた。
原題:
Stock Supply Glut Looming Over Market as Companies Suck In Cash(抜粋)
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