アメリカの科学雑誌は人類最後の日までの残り時間を象徴的に示す「終末時計」の時刻について、国際社会が新型コロナウイルスに対応できていないことは核戦争などの脅威への備えができていないことを示しているとして、去年と並んでこれまでで最も短い「残り1分40秒」と発表しました。
アメリカの科学雑誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は27日、オンラインで記者会見を開き、人類最後の日までの残り時間を象徴的に示す「終末時計」の時刻を「残り1分40秒」と発表しました。
その理由について雑誌の責任者は「国際社会は新型コロナウイルスに適切に対応できていない。それは核兵器と気候変動にもいかに準備不足であるかを気付かせた」と述べて、地球規模の課題に国際社会が協調して対処できていないためだと指摘しました。
「終末時計」は冷戦初期の1947年に「残り7分」から始まり、その後米ソの対立と核軍縮のはざまで針が進んだり戻ったりを繰り返し、冷戦終結後は「残り17分」まで戻されました。
今世紀に入ってからは地球温暖化の進行も考慮されるようになり、去年はこれまでで最も短い「残り1分40秒」まで進められていました。
一方、会見に参加した科学者からは、アメリカのバイデン政権が地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」への復帰を表明したことやロシアとの核軍縮条約「新START」を5年間延長することで原則的に合意したことを歓迎する発言もありました。
会見には広島県の湯崎知事もビデオメッセージを寄せ、「核抑止力は人間が作った虚構であり、みなが信じるのをやめれば影響力は失われる。私たちはできるだけ多くの人を巻き込んで核兵器の廃絶に向けた力強い機運を作り出す必要がある」と述べて核廃絶への支持と行動を呼びかけました。
国連「深刻に受け止めるべき」
「終末時計」について国連の報道官は27日の記者会見で、深刻に受け止めるべきと指摘したうえで、「『終末時計』は各国に国際協調を通じて核軍縮を進める必要があると訴えている。その一例が国際社会による強力なメッセージとなった核兵器禁止条約の発効であり、もう1つがアメリカとロシアが核軍縮条約の『新START』を5年間延長することだ」と述べて、核保有国が核軍縮の取り組みを強化する必要性を強調しました。
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