
【モスクワ=小川知世】ロシア各地で23日、反体制派指導者ナワリヌイ氏の釈放を求める抗議集会が開かれた。当局は違法な集会だとして厳戒態勢を敷き、人権団体によると同氏の妻も含めて一時1900人以上が拘束された。プーチン政権は欧米で強まる批判に取り合わず抗議を抑え込む構えで、反体制派との攻防が続きそうだ。
ナワリヌイ氏は政権批判や汚職を追及する活動で知られ、2020年8月に政権が毒殺を図った疑いが指摘されている。過去の有罪判決に基づく執行猶予中の出頭を怠ったとして、療養先のドイツから帰国した17日に司法当局に拘束された。
集会は反体制派が全土で呼びかけた。ロイター通信によると、モスクワでは4万人以上が集まった。参加者は「プーチンのいないロシアを」「ナワリヌイに自由を」と声をあげ、治安部隊が市民らを次々と連行した。参加した20代の女性は「捕まるのは怖いが、自分の子供が大きくなった時におびえて暮らすような国になるのを黙認できない」と語った。

治安当局は抗議拡大を阻止しようと圧力を強めた。内務省は22日に「秩序を脅かす無許可集会は速やかに中断される」と警告していた。
通信当局は中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などSNS(交流サイト)各社に抗議参加を呼びかける動画の削除を要請した。未成年をデモに参加させないように保護者に呼びかけ、参加すれば退学になると大学で学生に注意があったとも伝えられた。
背景には反体制派の影響力が増すことへの政権の強い焦りがうかがえる。ナワリヌイ氏は拘束が予想されていたにもかかわらず帰国に踏み切り、国内外で注目を集めた。同氏陣営が19日に公開したプーチン大統領の汚職疑惑を指摘する動画の視聴は6千万回を超え、記録的な伸びをみせている。
ロシアでは9月に下院選、24年に次期大統領選を予定する。プーチン氏の健康不安や早期退任といった観測が飛び交い、後継問題も意識されている。政権は内政の不安定化を防ぐため、抗議が本格的に広がる前に徹底して抑え込む考えとみられる。

今後は抗議が長期化するかが焦点となる。新型コロナウイルス禍で国民の関心は生活の維持に向かい、広がりは限定的だとの見方もある。経済の低迷で政権に対する不満はくすぶっている。抗議の厳しい取り締まりがさらなる反発を招き、政権が一段と締め付けを強めることも考えられる。
ナワリヌイ氏を巡っては執行猶予判決を禁錮3年半の実刑に切り替えるかの審議を2月2日に予定する。同氏が長期にわたって収監されることが有力視されている。米ブルームバーグ通信は22日、別の詐欺容疑でさらに禁錮10年の実刑が科される恐れがあると政権に近い筋の話として報じた。
ナワリヌイ氏の釈放を訴える欧米との対立激化は必至だ。バイデン米大統領はナワリヌイ氏の問題などを巡り情報機関に実態解明を指示した。欧州連合(EU)では対ロ制裁を強化すべきだとの意見が出ている。欧州議会は21日、独ロを結ぶパイプラインの建設中止を求める決議を採択した。
プーチン政権が欧米に反発し「内政干渉」との主張を展開することも予想される。隣国ベラルーシでは20年に独裁的なルカシェンコ大統領の6選発表に大規模な抗議が起きた。同氏は抗議が「欧米による政権転覆の試み」と主張し、反体制派への圧力を強めた。ロシアも論調をあわせて欧米に非難の矛先を向けた。
2021-01-23 12:14:36Z
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