この調査は昨年2月と9月に、アジア域内の5ヵ国・地域(中国、香港、日本、マレーシア、シンガポール)で働く9,000人以上の社会人を対象に行われたもので、未来の職場づくりの中核となる4要素(フレキシビリティ、テクノロジー、スキルの向上、目的)について質問しています。新型コロナウィルスによる感染が確認され始めた2月、さらに感染が拡大した9月の2度の調査結果を比較することで、今回のコロナ禍が職場の意識にもたらした変化を明確に把握するとともに、企業の現在と今後の課題を提示することを目的としています。
前回調査でアジアの社会人が転職条件の最上位に挙げたのは、給与や福利厚生でしたが、今回の調査では従業員の充実感が優先事項に上がりました。これは、柔軟な働き方の他に、働き甲斐やつながりなどを求める意識が高まったことが要因とみられます。一方、日本の結果を見ると、新型コロナ収束後の転職活動で最も重視するのは、柔軟な働き方であるとの回答が最多数を占めました。
コロナ禍以降、転職の際に最重要視されるポイントが「給与」から「柔軟な働き方」にシフト
新型コロナウィルスの感染拡大前に転職条件として多数を占めていたのは、「給与や福利厚生」(77%)、「会社の価値観や文化に共感すること」(51%)、「雇用の安定と安心」(49%)でした。しかしコロナ禍を経た今回の調査ではこれらの順位が後退し、代わって最上位に躍進したのが「柔軟な働き方」(76%)です。その一方で回答者の過半数(55%)は、コロナ禍後に、給与や福利厚生の重要性が低下したことを認めており、コロナ禍前後で社会人の意識が変化したことを裏付けています。雇用主側からの配慮や熱意を重視する傾向も高まりつつあり、これは職場に厳しい規律を求め続けてきた日本の企業文化に、重要な変化をもたらす兆しであると言えるのかもしれません。
変化する日本の職場―ハイブリッド型勤務導入へ
コロナ禍以前にリモートワーク制度を導入していた日本の企業は、28%に過ぎませんでした。それだけにコロナ禍以後のリモートワークの普及は、日本の社会人にとって大きな変化であったと言えるでしょう。今回の調査では、リモートワークの重要性が増したとの回答が大多数(84%)を占める一方で、オフィス勤務の重要性を指摘する意見も多数(71%)を占めており、後者の回答には、働き方に対する日本人特有の意識が反映されていると思われます。これに鑑みると、日本の職場には、デジタル化とコロナによる危険回避を同時に進める策として、ハイブリッド型勤務が最適であると考えられます。
日本の社会人の9割以上が働きがいを重視
働く動機については、日本の回答者の91%が「働きがい」を重視(重要/非常に重要)していることが明らかになりました。コロナ禍以前は「自分の貢献が認められ、報われること」が多数を締め(69%)、「企業の価値観や理念に共感すること」(60%)、「自分の仕事が社会や環境に与える影響を見たり感じたりすること」(55%)と続いていました。 有意義な仕事についての問いには、「従業員の充足感を重視
する組織の一員であること」(67%の回答に対して実際に提供している組織は41%)、「自分にしかない専門的なスキルを活用する機会があること」(49%の回答に対して実際に提供している組織は44%)、「自分の貢献が認められ、報われること」(45%の回答に対して実際に提供している組織は50%)などの回答が挙げられました。
ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクター、リチャード・アードリーは、上記の調査結果について次のように述べています。「従業員の充実感や、柔軟な働き方を重視する企業が重視される傾向が強まっています。共通するのは、これらがワークライフバランスの観点からも重要な点です。企業を取り巻く環境は甚大な変化に晒されており、こうした傾向は当面続いていくでしょう。未来の職場づくりには、柔軟な働き方や従業員の充実感を重視する施策を盛り込んでいくことが重要です。」
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