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Saturday, March 6, 2021

声をつないで:東京23区唯一の女性区長が声を上げなかった理由 - 毎日新聞 - 毎日新聞

声をつないで:東京23区唯一の女性区長が声を上げなかった理由 - 毎日新聞 - 毎日新聞

都内唯一の女性区長としてこれまでの経験を語る近藤区長=足立区役所で2021年3月1日午後0時3分、南茂芽育撮影 拡大
都内唯一の女性区長としてこれまでの経験を語る近藤区長=足立区役所で2021年3月1日午後0時3分、南茂芽育撮影

 東京23区唯一の女性区長、足立区の近藤弥生さん(61)は警察官や都議を経て現在区長4期目のベテランだ。女性首長は全国で約2%にとどまり、「男性社会」の中を歩んできた。女性蔑視とも受け取れる「選挙応援」も受けてきたという。それでも必ずしも面と向かって声を上げずに来たと振り返る。その思いを聞いた。

 ――警察官出身という経歴ですね。

 ◆警視庁の当直勤務で泊まり込む時、子どもを預けられないという理由で、やる気や力があるのに女性警察官たちが何人も辞めざるを得なかった現実を見てきました。公務員で福利厚生がしっかりしている警察官ですら、です。女性の生き方が社会の仕組みで変わってしまうのではないか。なんとかしたい、と思っていた時に、自民党都議だった父が(衆院選に出馬し)落選。(後を継ぐ)チャンスかもしれないと思い、自民党から出馬しました。

 ――当時は都内で党内唯一の女性候補。定数6の選挙区で自民党から3人出馬する激戦になりましたが、3人の中でトップ当選でした。

 ◆たくさんの女性が応援してくれました。いろんな考えの人がいるので、「女性の自立」を正面に据えて戦いはしませんでした。都議選の応援に来てくれた男性議員には「実は僕は、近藤さんには選挙になんか立たずに嫁にでも行けばいいと思ってるんですけどね」と言われました。本人はただ会場を笑わせるつもりだったんでしょう。実際、皆くすくす笑っていました。「がんばってるんだから応援してあげてほしい」って言ってほしかったですよ。

 初めて質問に立った都議会でも、同じ自民党内からヤジが飛んできました。保育の質問をした私に対して、「3歳児神話を知ってるか」「女が子どもを預けるから子どもは不良になるんだ」と。普段、選挙では「これからは女性が活躍する時代です」とか言うのに、本音と建前の違いを感じました。それに普通、同じ党の議員に拍手はしてもヤジは飛ばしませんよね。

 どうしたものかと思っていた時、都議会政調会の事務局の女性に「自分と違う考えの人をねじ伏せるのに力を使うより、女性が自分の意思で多様な人生を選択できるように力を尽くす方が利口だ」と言われたんです。今この瞬間にも困っている女性はいる。そのために議員バッジをつけて仕事をしよう、と目が覚めました。とはいえ、都議会自民党に女性は1人。議会で質問して変えていくには限界があると思い、48歳の時に区長に立候補しました。

 ――区長選は都内初の女性候補同士の一騎打ちでした。戦いづらさはありましたか。

支持者らの万歳三唱のなか初当選を喜ぶ近藤弥生氏=足立区平野の選挙事務所で2007年6月3日、杉本修作撮影 拡大
支持者らの万歳三唱のなか初当選を喜ぶ近藤弥生氏=足立区平野の選挙事務所で2007年6月3日、杉本修作撮影

 ◆「女に首長が務まるのか」と言う声も聞こえてきました。「これで何かミスすると、『だから女には任せられないんだ』と言われる」と責任も感じました。区長になってからは、治安改善や子どもの学力向上、貧困の連鎖の改善に取り組みました。情報を自分で取りにいき、より適切な判断を下すためにはどっぷり仕事につかっていないといけない時も多い。子どもをつくったり家族を持ったりしながら仕事のパフォーマンスを上げるのは困難だと思いました。

 ――昨年、区議会でLGBTなど性的少数者への差別発言をした白石正輝区議(80)は「普通の結婚をして子どもを生み、育てることがいかに人間にとって大切なことか」とも言いました。

 ◆結婚しておらず子どももいない私は「普通」じゃないのか、と悲しく思いました。女性はこうあるべきだ、という古典的な考えにとらわれているのでしょう。外で働こうが家で子どもを育てようが、個人やカップル、それぞれの価値観で人生を選択できることが大切です。

 ――差別や蔑視の発言を聞いた時、どのように対応してきましたか。

 ◆やっぱり私の立場だと、直接その場でピシッと言える場合と言えない場合がありますね。放っておきはしないけれど、場を選んで少しやわらかくお話ししたり、後から「実は傷ついちゃったわ」と伝えたり。何かを実現しようと思ったらそれなりのポジションを見つけないといけない。わきまえないと使ってもらえないと思っていました。ひきょうと言われれば、そうだったかもしれません。

 (森喜朗氏の女性蔑視発言に反発して声を上げた)「わきまえない女」たちの動きはとても良いと思います。その時代を生きた女性たちがひとつずつ切り開き、ステージをあげてきてくれた。今の女性たちが天井を突破していこうとするのは自然な流れではないでしょうか。

 ――女性の首長は全国でまだ約2%です。女性の政治家が増える重要性をどう考えていますか。

 ◆(議員などの一定数を女性に割り当てる)クオータ制は逆差別になると思うから腑(ふ)に落ちない。でも、女性が増えていけば「女性だから福祉、子育て」とカテゴライズされることなくいろんな意見が出てくると思います。年齢の多様性や性的マイノリティーも含め、いろんな人がいて切磋琢磨(せっさたくま)するのが良いと思います。【聞き手・南茂芽育】

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2021-03-06 10:37:08Z
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