Pages

Saturday, May 1, 2021

全国で最も新しい建屋 少年院「駿府学園」ルポ - 中日新聞

駿府学園の塀は低く建屋の屋根には太陽光パネルが設置されている=静岡市葵区で

駿府学園の塀は低く建屋の屋根には太陽光パネルが設置されている=静岡市葵区で

 県内で唯一の少年院「駿府(すんぷ)学園」(静岡市葵区)の建屋が新しくなった。庁舎に太陽光パネルを設置し、新たに体育館を併設して災害時の避難所としても活用する。二月に工事を終えたばかり。「全国で最も新しい建屋の少年院」を見学し、少年たちの生活をのぞいた。 (高島碧)

 早速、少年たちが生活する宿舎へ。一階には入院して最初の一週間を過ごす「静思寮」がある。黄緑色の鉄扉が付いた広さ三畳ほどの個室が並ぶ。室内に扉の取っ手はなく、自由な出入りは許されない。田島秀紀次長は「ここは被害者に思いをはせ、自分と向きあう部屋です」と説明する。新築で全面空調になり、各部屋にテレビが付いた。「昔は夏は扇風機、冬は廊下にストーブのみという少年院が多かった。快適になった」

 少年はここで過ごした後、三階の共同部屋や個室に移る。個室の広さは同じだが、スライド式の木製扉に鍵は無く、南向きの窓には鉢植えの花が飾られている。室内の机には、数学の教科書のほかに少年漫画や芸能雑誌が見えた。余暇時間を過ごすホールは、大型のテレビや熱帯魚の水槽があり、本棚に漫画や小説が八百冊並ぶ。日差しが届く明るい部屋に、暗く閉ざされた少年院の印象はない。

 災害時に一時避難所として住民に開放する体育館。丸刈りの少年六人が整列し「イチ、ニ、サン」と声を合わせて運動を始めた。最も背の高い、最年長の少年が号令をかける。この日はバドミントンだ。

 田島次長は「不規則な生活を送り、箸の持ち方も知らない子がいる。ここは生活習慣を含めて学び直しの場。体が健康になれば自信がつき、自分の目標に向けて前向きになれる」と話す。

◆田島次長「出院…地域の支え大切」

 駿府学園は一九四〇年に静岡少年保護協会「狩野修練道場」として始まった。十四〜十七歳の男子が、六カ月以内の短期で矯正教育を受ける。関東甲信越や静岡の家庭裁判所の送致決定を受けている。

 旧施設は築三十七年で、二〇一六年に新築工事を始めた。茶畑のある山の麓に位置し、総面積は六万三千平方メートル。敷地内には保護者との面会室や職員室がある庁舎と、少年が生活する宿舎がある。道路を隔てて体育館も整備した。

 四月現在、入院する少年は六人。定員九十人に対し、一六年が四十六人、一九年は二十五人と少子化を背景に減り続けている。非行名は、二〇年の十六人のうち半数が窃盗や詐欺、四人が傷害だった。実母父と暮らしているのは四人にすぎず、他は一人親だった。

 田島次長は「一人一人の特性に応じた教育課程を組み、それぞれの目標に向けて準備する。個人に応じた教育にやりがいがある」と話す。「少年が出院後に社会で生きていくには、地域で支える人がいることが大切。まずは、多くの人に少年院や少年たちのことを知ってほしい」と理解を呼び掛ける。

関連キーワード

Let's block ads! (Why?)


からの記事と詳細 ( 全国で最も新しい建屋 少年院「駿府学園」ルポ - 中日新聞 )
https://ift.tt/3xIYuaO

No comments:

Post a Comment