「幸福度の高い国」として知られるフィンランドでは、「ヘヴィ・メタル」が国民的な音楽として愛されている。心理学研究者のフランク・マルテラさんは「雪に覆われた土地で暮らす内気なフィンランド人にとって、ヘヴィメタは負の感情を解放し、浄化する作用を持っている」という——。
※本稿は、フランク・マルテラ『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。
カラオケ・バーでもヘヴィメタが多く歌われている
フィンランドは、2018年、2019年の世界幸福度報告で共に1位にランキングされた。
国民の生活への満足度のランキングを作ると、フィンランドをはじめ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドといった北欧の国々が必ずトップ10に入る。特に社会の安定度、安全性、自由という面で、北欧諸国は際立っている。
長い冬の気温は氷点下で、しかも、一日中暗闇に包まれてしまう街さえある。そんな中、フィンランド人たちはどうして幸せでいられるのだろうか。それには実はヘヴィ・メタル音楽が重要な役割を果たしているのかもしれない。
ヘヴィ・メタルは総じて言えば評判の良い音楽ではない。しかし、フィンランドでは事情が違う。
ポップ・ミュージックは元来、明るく楽しい音楽だが、ヘヴィ・メタルは暗く重苦しい。冬が暗く寒いことで知られるフィンランドには、人口1人あたりにすると、地球上のどの国よりも数多くのヘヴィ・メタル・バンドが存在している——10万人あたり63のバンドがある計算になる。
フィンランドでは、ヘヴィ・メタルが音楽の王である。主要なラジオ局でかかる音楽もヘヴィ・メタルが多いし、カラオケ・バーでも多く歌われている。フィンランドで史上おそらく最も人気があったバンドは、チルドレン・オブ・ボドムだろう。チルドレン・オブ・ボドムは王の中の王と言える存在で、ヘルシンキからリオ・デ・ジャネイロまで、どこでコンサートを開催しても満員になる。
暗く重苦しいヘヴィ・メタル音楽が国に幸福をもたらしているというのはなにか矛盾するようだが、それはフィンランドという国の抱える矛盾を反映しているようにも思える。
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