米宇宙開発企業スペースXの創設者イーロン・マスク氏は7日、ウクライナの通信インフラに不可欠とされる同社の衛星インターネットサービス「スターリンク」について、クリミア半島で使用したいとするウクライナ側の要請を拒否していたことを明らかにした。「重大な戦争行為」に加担しないようにするためだったという。
マスク氏によると、ウクライナ政府から、ロシア占領下のクリミア半島南西部セヴァストポリでスターリンクを稼働させるよう緊急要請があったという。セヴァストポリにはロシア海軍の主要港がある。
スターリンクをめぐっては、近く発売されるマスク氏の伝記に、ウクライナのロシア海軍艦隊への奇襲攻撃を防ぐために接続を切るよう技術者に指示していたと書かれていると、米メディアが報じていた。
マスク氏は、ウクライナがクリミアでロシア海軍艦隊を待ち伏せし、クレムリン(ロシア大統領府)による核の報復が誘発されることを恐れていたとしている。
「悪行を働いている」
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、こうした対応がロシア軍の攻撃を可能にしたと指摘。マスク氏が「悪行を働いている」と非難した。
そして、ロシア海軍艦隊はその後、民間人に対する致命的な攻撃に加わったとした。
「イーロン・マスク氏はスターリンクを使って妨害し、ウクライナのドローン(無人機)がロシア軍艦隊の一部を破壊するのを許さなかったが、この艦隊が(巡航ミサイル)カリブルをウクライナの都市に打ち込むことは許可した」と、ポドリャク氏は述べた。
「なぜ一部の人は、戦争犯罪者や、彼らの殺人願望を必死に擁護したがるのか。自分たちが悪行を働き、悪を助長していることに気がついているのだろうか」
ウクライナはセヴァストポリで、爆発物を搭載した無人潜水艇を使ってロシアの艦船を狙ったが、スターリンクへの接続を失い、「無害な状態で陸に打ち上げられた」と、マスク氏の伝記には書かれている。
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スペースXのスターリンクは、地球低軌道を周回する衛星と地上の端末で構成されている。戦闘によりインフラが混乱しているウクライナのインターネット接続と通信を維持するうえで、極めて重要な役割を担っている。
同社は昨年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して間もなく、ウクライナに数千台のスターリンク用衛星アンテナを提供し始めた。
「何も解除していない」
そして、「(ウクライナ)政府当局から、セヴァストポリまでの地域でスターリンクを稼働させるよう緊急要請があった。停泊中のロシア艦隊の大半を沈めるという明らかな意図があった。私がその要求に同意していたら、スペースXは重大な戦争行為と紛争激化に明確に加担することになったはずだ」と、マスク氏は述べた。
ロシアは2014年にクリミア半島を一方的に併合。その8年後にウクライナへの全面侵攻を始めた。
「無人機攻撃での使用は認めない」
マスク氏は過去に、スターリンクが「ウクライナの前線までの地域における接続の支柱になっている」と述べている。一方で、「スターリンクが長距離無人機攻撃での使用は許可しない」としていた。
マスク氏は伝記の中で、アイザックソン氏にこの点について繰り返し尋ねている。「私はこの戦争にどう関わっているのか? スターリンクは戦争に関与するためのものではない。ネットフリックスを見たり、くつろいだり、学業のためにインターネットに接続したり、平和的な良いことをするためのものであって、ドローン攻撃のためのものではない」。
また、ウクライナ侵攻について個人的見解も述べている。マスク氏は、ウクライナ人とロシア人は「領土の小さな範囲を獲得したり失ったりするために」死んでいっている、彼らの命に値する行為ではないとして、停戦を呼びかけた。
マスク氏は昨年10月、独自の和平案を提示。「(ロシアに)編入された州で、国連の監視下で住民投票を再び行う。立ち去ってほしいと言うのが人々の意志なら、ロシアはそうする」、「(2014年にロシアが併合した)クリミアを、世界が正式にロシアの一部として承認する」などとし、怒りを買った。
2023-09-09 04:34:38Z
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