スーティク・ビスワス、ヴィカス・パンデイ(G20サミット、デリー)
インドの首都ニューデリーで9~10日の日程で開催されている20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、共同宣言の内容が合意に至った。ウクライナでの戦争についての言及も盛り込まれた。
10日に正式に採択される共同宣言では、領土拡大での武力行使を非難したが、直接ロシアを非難するには至らなかった。
ウクライナ政府は、共同宣言について「誇れることは何もない」と述べている。
ロシアの「ウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席は、今回のサミットを欠席している。
サミットではこのほか、気候変動や途上国の債務問題などが話し合われた。
ウクライナは共同宣言の内容を批判
サミット初日の9日は、予想外に大きな見出しが並ぶ一日となった。ウクライナ紛争をめぐるグループ内の対立を考えれば、少なくともこの日に共同宣言を期待する者はほとんどいなかった。
それでもインドのナレンドラ・モディ首相は、宣言の内容で合意に至ったと発表した。
BBCが9日に入手した宣言の草案は、ウクライナの項目だけ空白になっており、土壇場での交渉が続いていることを強く示していた。
昨年11月のバリでのG20サミットと同様、会議の争点はウクライナでの戦争だった。
デリー宣言は、西側とロシアの双方が前向きな面を見いだせるように設計されている様子。しかしその過程では、昨年のバリでの宣言ほど強くはない言葉でロシア政府を非難している。
G20は昨年、ロシアによるウクライナへの侵略を「最も強い言葉で」非難した。ただし、「その状況や制裁について、他の見解や異なる評価もあった」と付け加えた。
一方、デリーでの共同宣言は、戦争についてロシアを直接非難していない。
しかし、「ウクライナにおける戦争が、世界の食料とエネルギーの安全保障に及ぼす人的被害と負の付加的影響」については言及している。また、「異なる見解と評価」を再度認めた。
重要なのは、宣言では「ウクライナに対する戦争」ではなく「ウクライナにおける戦争」と明記されていることだ。この言葉の選択は、ロシアが宣言を支持する可能性を高めたかもしれない。
昨年のG20サミットに招かれたウクライナは、今年は参加していない。今回の共同宣言については批判的な反応を示している。
ウクライナの外務省はソーシャルメディアで、「ロシアのウクライナに対する侵略行為に関して、G20が誇れることは何もない」と指摘した。
ウクライナ政府にとって、ロシアの「侵略」への言及がなくなったのは厳しい状況だ。この戦争の位置づけをめぐり、いわゆる「グローバルサウス(世界の南側に偏っている途上国)」との論争に西側諸国が敗れつつある表れだと、ウクライナとしては受け止めざるを得ない。
アフリカ連合が常任メンバーに
モディ首相はまた、アフリカ連合(AU)をG20の常任メンバーにすると発表した。
インド政府は、開催国の基盤としてこれらの国々の声を高めることを優先した。そして近い将来、アジアとアフリカ全域での影響力をめぐって中国と争うことになる中で、この戦略的選択から報酬を得ようとしている。
14億人の人口を抱えるアフリカ大陸にとっても、G20のような世界的なフォーラムでより広い代表権を持つことになったのは歓迎すべき展開だった。
気候変動でも途上国に焦点
気候変動も活発に議論された。
サミットに先駆けて行われた省庁レベルの会議では、この件に関する合意はなされなかった。しかし関係者らは、「100%の合意」に至ったとしている。
宣言の中で、気候変動に関するギブ・アンド・テイクが起きていることは明らかだ。
G20は、世界の温暖化ガス排出量の75%以上を占める。宣言では、各国は「既存の目標や政策を通じ、再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍にする努力を追求し、奨励する」とした。
途上国はこれまで、再生可能エネルギー使用目標の引き上げや化石燃料の段階的削減などについて、抵抗していた。
温室効果ガス排出量のピーク到達については、途上国は時間稼ぎに成功した。ピーク到達後は、排出量を減らさなくてはならない。
今回の宣言では、「持続可能な開発、貧困撲滅の必要性、公平性、そしてさまざまな国情に沿って、ピーク到達の期間を設定できる」と述べている。
専門家らは、今後10年にわたり、世界的な協力を通じて環境危機に取り組む「グリーン開発に関する取り決め」も重要だとしている。
このほか、途上国が低排出移行を支援するため、低コストの資金調達に向けて協力することを約束した。
コンサルティング会社「ユーラシア・グループ」の南アジア主任を務めるプラミット・パル・チャウデュリ氏は、インドはグリーン融資について「そこそこ」の成果を出したと述べた。
「グリーン融資は現在、富裕国から他の富裕国に向けられており、民間資本が中心となっている。新興国でさえ受け取れていない。インドはこれを変えようと、努力してきた。その中心となるのは、多国間開発銀行がグリーン分野で、民間資本の流れのリスクを抑えるための作業を始めることだ」
途上国の債務問題にも懸念が広がっている。世界銀行の計算によると、世界の最貧国は二国間債権者に対して年間600億ドル以上の債務を負っており、これが債務不履行(デフォルト)のリスクを高めている。この債務の3分の2は中国に対するものだという。
G20は今回、こうした国々の債務負担の管理を支援したいと述べている。デリー宣言は、途上国の債務の脆弱性に対処することを約束した。
経済回廊を設置
経済面ではこのほか、アメリカがインドや中東諸国、欧州連合(EU)などと、これらの地域を結ぶ鉄道と海運の経済回廊を設置することで合意した。中国の「一帯一路」構想に対抗するものとして、注目されている。
回廊はインドからサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、イスラエル、EUを結ぶ予定。貿易に加え、エネルギー資源の行き来やデジタル面での接続性も向上したいとしている。
会見には、アメリカのジョー・バイデン大統領とインドのモディ首相のほか、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子や欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も出席した。
追加取材:ナヴィン・シン・カーダ(デリー)、ポール・アダムズ外交担当編集委員(キーウ)
2023-09-10 06:49:36Z
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