カセットテープに録音された男性の声は、少しかすれていた。
「わしも娘がかわいい。それまでなんぼ拷問受けても、そればっかりはしてないさかいに……。娘のこと言われたときには、もうそれに応じなしゃあないと」
録音場所は警察署の接見室。アクリル板を挟み、男性と2人の弁護士が向き合っていた。
「うそでも言うた限りは…」 隠し録音に残るやりとり
男性は弁護士に対し、やってもいない強盗殺人を娘のために認めたと説明した。弁護士は到底、納得できない。
弁護士「しかしやぞ、強盗殺人やぞ。『自分が真犯人です』と言うたら、娘の立場はどうなるんや」
男性「うそでも言うた限りは、そのように私はしていかなしゃあないと」
弁護士が隠し録音したテープには、25分間のやりとりが残る。とつとつと語る男性は阪原弘(ひろむ)元被告。その後の裁判で、無期懲役が確定した。
裁判のやり直し(再審)を求めたが、この接見から23年後の2011年、無期懲役囚のまま亡くなった。75歳だった。
滋賀県日野町で40年前に起きた「日野町事件」。元被告の裁判をやり直す司法判断を大津地裁、大阪高裁が出し、最高裁で審理が続いています。取材班は約1千点の事件記録と約50人の関係者にあたり、捜査と裁判を検証しました。
真冬に消えた酒店経営の女性
滋賀県の南東部。三重県と分かつ鈴鹿山脈のふもとに日野町(ひのちょう)はある。かつて近江(おうみ)商人が行き交った、人口2万人余りの小さな町だ。
町はずれに、「ホームラン酒店」はあった。店主の名は池元はつさん(当時69)。高齢の叔母とここで暮らし、従業員を雇って店を切り盛りしていた。
「優しいはつさんを慕う人は多かった」
従業員だった女性(74)は言う。夜になると常連が来て、酒を飲んだ。
その池元さんの姿が見えないと騒ぎになったのは、1984年12月29日のことだった。
警察や住民が捜索を続けたが、手がかりが見つからない。
年が明け、1月18日の昼下…
2024-03-21 00:00:00Z
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