「チェス・レコードはいつもブルースじゃないプレイヤーと俺を組ませる。でも俺のサウンドを変えることは、俺という一人の男を変えることになる」とマディ・ウォーターズは話していた。1969年になる頃、マーシャル・チェスは本物のキング・オブ・ブルースを復活させるために何か金銭的に実行可能なことをしなければならなかった。
クリームの成功、そしてフリートウッド・マック、テン・イヤーズ・アフター、そして話題となったジミー・ペイジが結成したバンド、レッド・ツェッペリンなどの出現により、当時ブルースが復活していることをチェスは把握していた。そして、ギタリストのマイク・ブルームフィールドがマーシャル・チェスの自宅を訪れた時、ある考えが生まれたとマーシャル・チェスは話している。
「それはマイク・ブルームフィールドのアイディアでした。彼が僕の家に来て、マディと何かやってみたいと言ったんです。彼はそれについてポール・バターフィールドにも既に話していました。二人はプロデューサーのノーマン・ダイロンと話す機会を作っていたんです。マイクとポールが一緒にチャリティーコンサートのためにシカゴへ来る予定があったので、その時にアルバムを作っても良いかもと話し合い、そこからすべてが始まりました」
そこでウォーターズ、オーティス・スパン(ギター)、バターフィールド(ハーモニカ)、ドナルド・“ダック”・ダン(ベースギター)、サム・レイ(ドラムス)、そしてポール・アスベル(リズムギター)がスタジオに集まり、1969年4月21日にレコーディングが開始された。
スタジオには50年代のビンテージ・アンプが積み上げられ、バンド・メンバーにはビールを、そしてウォーターズにはシャンパンが用意された。プロデューサーのノーマン・ダイロンは3週間かけてチェス・レコードのテープ保管所にて20曲近くの傑作を探し出し、その中には当時の人々には忘れ去れている楽曲も含まれていた。
レコーディングはパーティーのような楽しい雰囲気でブルース好き以外は立ち入り禁止、そんな中で一流の音楽が作り出された。毎晩5時間以上がレコーディングに費やされ、話によるとウォーターズはしゃがれ声になっていたが、彼は満足そうにしていたらしい。
ウォーターズがその環境の中でくつろいでいるのは明らかで、リラックスしている。自分の空間を求めて努力する必要もなく、バンドメンバーは明らかに彼の領域を尊重している。伴奏は鮮やかであるが華々しいわけではなく、色調は情熱的だが強引ではなく、全体的なサウンドはウォーターズのオリジナルの傑作に最も近い作品と言えるだろう。
スタジオ・セッションが三晩続いた後に、アスベル以外の全員がPhoenix Fellowship Academy of Cultural Exploration & Designのチャリティーコンサート、スーパー・コズミック・ジョイ=スカウト・ジャンボリーのステージに立った。魔法のような瞬間がいくつもあり、特にライヴ・セットではそれが際立った。「Baby Please Don’t Go」でのバターフィールドとスパンの相互作用のあるリズム・プレイ、「The Same Thing」でのウォーターズのスライド演奏率いる繊細な仕上げ、聴いていると思わず興奮してしまう「Honey Bee」のソロを称賛する観客たち、そして「Got My Mojo Working」でのウォーターズに合わせて繰り返される演奏などが絶賛された。
Muddy Waters – Got My Mojo Working (Live)
マーシャル・チェスが「5千人のキッズたちが“I’ve Got My Mojo Working”を歌う様子は、僕がそれまでに聞いた最もパワフルなものでした」と言っている。そしてアンコールとして収録されている「I’ve Got My Mojo Working」のワクワクさせられるリフレイン。バディ・マイルズが参加し、鳴り響くシンバルと雷のようなキックドラムがたっぷりと含まれている。そして観客は、大興奮していると表現するには物足りないぐらい熱狂的だ。
それは実に見事な威厳のあるパフォーマンスである。ウォーターズの「Long Distance Call」でのソロを聴いただけでも、キングが復活したと思えるだろう。シカゴ・トリビューン紙は、「一つの世代から新しい世代へとブルースがバトンタッチされている」と書いているがそうは思えない。若きミュージシャンたちが先人たちへの敬意を抱いていることが分かっていると、決して単なるバトンタッチではないと思えるはずだ。
再びチェスは賢明な決断を下した。タイトルもぴったりだ。現実的には、このレコーディングを実現させる意欲は以前から高まっていた。ブルームフィールドは、「あれは1969年のことで、バターフィールドとブルームフィールドはすでにマディと11年近く演奏してきた歴史がありました。マディは自分の“息子たち”を誇りに思い、“Fathers and Sons / 父と息子”というタイトルがつけられたことは驚くことではない。みんなそれを気に入っていたんです!」と話している。
この作品はマディにとってメインストリームで最も成功した作品で、全米アルバムチャートに登場した唯一の作品でもある(最高70位にランクインし、前年の『Electric Mud』は最高127位だった)。
Written By Richard Havers
『Fathers and Sons』
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March 14, 2020 at 09:48PM
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