【ニューヨーク=白岩ひおな】バイデン次期米大統領の就任式を20日に控え、全米各州が警備を強化している。州議会議事堂周辺でのデモを警戒し、各州知事は議事堂の閉鎖や州兵の動員を決めた。首都ワシントンでは2万5千人の州兵による警備体制が敷かれ、暴力行為などの混乱に備える。「米国の結束」を掲げて就任式に臨むバイデン次期政権だが、異例の厳戒態勢の下で船出を迎える。
米連邦捜査局（FBI）は就任式の前後に全米50州の州議会議事堂で武装集団によるデモの可能性について警告している。議事堂周辺でのデモに備え、テキサス州は16日から州議会の議事堂を閉鎖し、敷地内への立ち入りも禁じる。ケンタッキー州も17日から州議事堂を閉鎖する。
オハイオ州は州兵1000人を動員し、州議事堂の警備や必要に応じた他地域への派遣に備える。デワイン知事は「悲しいことだが、平和的な抗議を暴力の機会に変えたがっている人々がこの国にはいる」と懸念を表明した。議事堂と州庁舎も17日から20日まで閉鎖し、職員には期間中の在宅勤務を命じた。ニュージャージー州も就任式当日の20日に在宅で勤務にあたるよう職員に指示した。
一方、ミシガン州は17日正午に計画されているデモに備え、州議事堂の周囲に6フィート（1.8メートル）のフェンスを設置した。州警察は同州の国家警備隊やFBIと協力し、議事堂周辺や州都ランシングの中心部の警備にあたる人員を増やしたと明らかにした。カリフォルニア州の交通当局は議事堂周辺で計画されていたデモの許可を取り消した。議事堂には金属フェンスを設け、1000人の州兵を動員して安全確保にあたる。ニューサム知事は「誰もが警戒を怠っていない」と述べた。
米国防総省は首都ワシントンでの就任式の警備に当初予定を上回る最大2万5000人の州兵の動員を承認した。連邦議会議事堂やホワイトハウス周辺にはフェンスや有刺鉄線が増設され、大半が通行禁止だ。通常なら大勢が集まり就任を祝う国立公園ナショナルモールは21日まで閉鎖される。
運輸当局や航空各社は、6日の連邦議会議事堂の襲撃・乱入のような暴力行為を狙った人物が首都ワシントンに入らないよう対策を講じている。米運輸保安局（TSA）は、20日の就任式に先立って議事堂乱入者のリストを共有し、暴力行為に加担する恐れがある数百人の人物の搭乗禁止や搭乗時の審査強化に乗り出した。空港の爆発物探知犬や機内に搭乗する連邦保安官を増やして危険人物をあぶり出す。
アメリカン航空やデルタ航空などの主要航空会社は週末から就任式が行われる来週にかけ、首都ワシントン行きの便の乗客に対し銃の預け入れを拒否する。アメリカン航空はフライトでのアルコール販売を停止する。米連邦航空局（FAA）は機内での迷惑行為を徹底して取り締まる方針を打ち出し、最高で3万5000ドルの罰金を科すとした。民泊仲介サイト最大手の米エアビーアンドビーは就任式の週を対象にワシントン周辺の宿泊予約を取り消す。
6日の連邦議会議事堂の一時占拠ではこれまでに100人以上が逮捕された。FBIのレイ長官によれば、200人以上の「暴力行為をもくろむ疑わしい人物」を把握しており、インターネット上に就任式の妨害などの暴力行為を示唆する投稿を大量に確認しているという。中国やイラン、ロシアなどが米国内の混乱に乗じて暴力的なメッセージを扇動する動きもあるという。
大手IT企業も当局への情報提供で協力する。フェイスブックは就任式の会場周辺のイベント作成を阻止し、規約違反の可能性があるイベントを削除する方針だ。グーグルは全ての政治広告を少なくとも21日まで停止する。グーグルは昨年12月、大統領選対策で実施した政治広告の一時的な停止措置を解除していた。ツイッターは連邦議事堂の占拠後、7万件以上のアカウントを永久に凍結した。
2021-01-16 22:49:38Z
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