世界最大のプロレス団体「WWE」のトップに立った証であるWWE王者に8度も輝いた「People's Champion(国民のチャンピオン)」が、2032年には「People's President(国民の大統領)」になるために立ち上がる。
これは、2月16日(日本時間17日)からNBCで放映された「ザ・ロック」ことドウェイン・ジョンソンの幼少期を描いたコメディ・ドラマ『ヤング・ロック』の予告編の1シーンである。
ドラマはプロレスラー一家の息子として育った10歳、15歳、20歳のときの「ザ・ロック」のエピソードを描いたものになると聞くと、アメリカ版『俺の家の話』のようだが、『俺の家の話』は脚本家の宮藤官九郎によるオリジナル・ストーリーなのに対して、『ヤング・ロック』はザ・ロックの半生を元にしたストーリーだ。
学生時代はアメフト選手として活躍
母方の祖父はピーター・メイビアで、父親がロッキー・ジョンソン。祖父と父親はともに新日本プロレスのリングでアントニオ猪木とシングルマッチでの対戦経験もあり、WWEの殿堂入りも果たした名レスラーだった。
エリート・レスラーのDNAを受け継いだドゥエインは、高校時代にはアメリカンフットボールのスター選手として活躍して、いくつもの強豪校から奨学金の提示を受けた中から、名門のマイアミ大学を選んで進学。マイアミ大学では全米優勝のメンバーにもなった。
史上最年少のWWE王者
子供の頃から憧れていたNFL選手になる夢を叶えられなかったドゥエインは、プロレスの世界に足を踏み入れる。
すぐに頭角を現し、若干26歳の若さでWWE(当時はWWF)の世界チャンピオンとなった。
アメリカのプロレスラーは「ベビーフェイス(正統派)」と「ヒール(悪役)」に分けられるのが、ザ・ロックはどちらでもない唯一無二の存在だった。
高いレスリングの技術だけでなく、マイク・パフォーマンスで観客を沸かせられ、ファンが求めているものを提供できる一流のプロレスラー。10年弱のレスラー人生であらゆることを成し遂げると、ハリウッドに行ってしまった。
プロレス王者から世界一稼ぐ俳優へ
プロレスの枠を超えた国民的スーパースターをハリウッドの映画界は諸手を挙げて迎え入れ、ザ・ロックを主役として起用。
プロレス界に復帰して、映画俳優とプロレスラーの二足のわらじを履いていた時期もあったが、映画界でのステータスが上がりすぎ、プロレスでケガをすることを恐れたハリウッド側からの説得もあり、プロレスはセミリタイア状態になっていった。
ザ・ロックが主演した映画やドラマは次々とヒットを飛ばし、世界で最も稼ぐ俳優として、エンターテイメント界には欠かせない存在となった。2020年度は8750万ドル(約92億円)を稼ぎ出して、2年連続して映画界の頂点に立った。
バイデン大統領、ハリス副大統領と対談
2032年のアメリカ大統領選への出馬はドラマの世界の中の話だが、これまでに何度も華麗な転身を遂げてきたザ・ロックならば現実味のある話でもある。
ザ・ロックはプロレス時代から話術が非常に巧みで、観衆の心を掴んできた。
2000年の民主党の全国大会にゲストとして招待され、同年の共和党の全国大会では応援演説にも登場した。
昨年の大統領選ではジョー・バイデンを支持。自身の公式ユーチューブ・チャンネルでバイデンとカマラ・ハリスとバーチャル対談をして、バイデンへの投票を呼びかけた。
「国民のチャンピオン」から「国民の大統領」へ
2017年には大統領選への出馬を真剣に検討したザ・ロックは、今でもその可能性を捨ててはいない。
「国民が望むのであれば、将来的には大統領選への出馬を検討する。本当にそう思っているし、私の答えは決して軽率ではない。それは国民次第だ。だから、私は待って、耳を傾けるだろう。脈に指をかけ、耳を澄ませている」
ザ・ロックがアメリカの大統領になれば、合衆国史上最もカリスマ性に溢れた大統領となるだろう。
銀幕のスターから大統領への転身は、ロナルド・レーガンという前例がいるし、プロレス界からもジェシー・ベンチュラがミネソタ州の知事に当選している。
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