日米首脳会談の共同声明に台湾問題への対応が明記された。菅義偉首相はバイデン大統領と初めて対面で会談した首脳として強固な同盟関係を誇示したが、中国が軍事統一も否定しない台湾周辺では情勢が急速に悪化しており、「厚遇」の裏で米中衝突に日本が巻き込まれるリスクが高まっている。(上野実輝彦、ワシントン・金杉貴雄)
◆中国の台湾侵攻「6年以内の恐れ」
「国際秩序に合致しない中国の行動に懸念」「中国の不法な海洋権益に関する主張と行動に反対」―。共同声明には中国を名指しで非難する厳しい言葉が並んだ。さらに中国が絶対に譲れない「核心的利益」として統一を目指す台湾について「両岸(中台)問題の平和的解決を促す」と安全保障に踏み込んだ。
中国による台湾への威圧は今年に入って激しさを増す。今月12日には台湾の防空識別圏に過去最多の戦闘機や爆撃機など中国軍機25機が侵入。海上では空母「遼寧」などが演習を繰り返し、米海軍の空母打撃群との緊張も続く。
軍事力増強に自信を深める中国の習近平国家主席は2019年1月、台湾に関し「武力行使を放棄しない」と断言。バイデン政権発足直後の今年1月、中国の国防省報道官が「台湾独立は戦争を意味する」と述べると、「戦争」の発言に米政権内に衝撃が広がった。
複数の米軍司令官は3月の議会公聴会で、中国の台湾侵攻について「6年以内の恐れ」などと証言。マクマスター元大統領補佐官は同月、ロシアが14年2月のソチ五輪直後にクリミア半島に侵攻したことを念頭に、来年2月の北京冬季五輪以降は「台湾に危機が迫る」と警告した。
◆軍事衝突で日本も標的か
日本政府は、バイデン氏が初の首脳会談の相手に菅首相を招いたことを「日米同盟の強固さを発信する大きなメッセージだ」(政府高官)と歓迎する。中国軍が不透明な軍拡を続け、沖縄県・尖閣諸島周辺への圧力を強めているためだ。
「(中国の)チャレンジは既に始まっている」。台湾有事を含め、外務省幹部は危機感を募らせる。その一方、防衛省幹部は「より積極的な役割を果たす必要がある」と指摘し、防衛費や在日米軍への思いやり予算の増額も示唆する。
だが、対中けん制を目的とする安全保障面での「日米蜜月」は危うさをはらむ。台湾有事に米軍が介入すれば、15年に成立した安全保障関連法の一つ「重要影響事態法」適用が現実味を帯びる。燃料や弾薬など軍事支援を行う自衛隊が攻撃対象になるだけでなく、在日米軍の発進拠点である沖縄の基地が狙われ、日本有事につながりかねない。
◆「米軍は行動すると確信」
台湾が攻撃された場合、米軍は動くのか。米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員は「米国は民主主義の台湾に40年以上防衛支援を約束してきた。動かなければ他の同盟国の信頼を失う。行動すると確信している」と語る。
米軍は3月、沖縄からフィリピンを結ぶ「第一列島線」に、射程500キロ以上の対中地上ミサイル網を早期に構築する必要があるとの報告書を議会に提出。沖縄に配備されれば、日本領域から直接中国を攻撃できることになるが、中国からの攻撃対象にもなり得る。
米中間の緊張が増すほど米国の日本への期待は高まる。今回の首脳会談は、東アジア情勢を一変させる火種になりかねない。
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2021-04-17 21:00:00Z
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