ロシアによるウクライナ侵攻22日目の17日、民間人が避難する施設への爆撃が続いた。ロシアのプーチン大統領はトルコのエルドアン大統領と電話協議し、停戦に必要とする要求の詳細を明らかにした。
マリウポリの惨状
南部の港湾都市マリウポリの当局は、ロシア軍が3週間近くにわたり続けている爆撃によって、市内の最大9割の建物が破壊されたと述べた。死者は少なくとも2400人に上っており、遺体の多くは集団墓地に埋葬されているという。
ウクライナ議会のレシア・ヴァシレンコ議員は、ロシア軍に包囲されているマリウポリについて、「空から破壊されている」とツイート。ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定という、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の西側諸国に対する要求を改めて強調した。
マリウポリでは16日、女性と子どもを中心に1000人近くが避難していたとされる劇場が爆撃を受けた。現場では17日、救出作業が続けられ、がれきの中から生存者が助け出された。その間も、ロシア軍による砲撃が周辺で続いた。
劇場は破壊的な被害を受けたが、多数が地下で生き残っているとみられている。現地との通信がほぼ断絶しているため、生存者や犠牲者の人数は、爆撃からほぼ1日が過ぎても明らかになっていない。
爆撃前の14日に撮影された米マクサーの衛星写真(下)によると、劇場の前後の地面には、ロシア語で「子どもたち」と大きな文字が書かれていた。ロシア軍に対し、多数の子どもが避難していることを示すためだったとみられる。
「砲撃で助けに行けない」
マリウポリから脱出したばかりの英慈善団体ヘイロー・トラストの地雷撤去作業員の男性は、市内の「地獄」と「恐怖」の状況を語った。
男性によると、高齢者が次々と自宅で亡くなっているが、砲撃が絶え間なく続くため、誰も助けに行けないという。
「1日たりとも数時間たりとも、砲撃や空爆がない時はなかった」、「知っている人がたくさん死ぬのを見た」と男性は話した。
男性によると、市内では高層ビルが破壊され、火災もあちこちで発生している。道路には爆撃による巨大な穴ができるなど、かつての町とは様変わりしているという。電気、暖房、水は途絶え、井戸も攻撃されたという。
ロイター通信はマリウポリ当局の話として、これまでに約3万人が市外に避難したと伝えた。
同市議会は、35万人以上がまだ市内で避難しているとみている。
ハルキウでは文化センターに攻撃
ウクライナ第2の都市、東部ハルキウ(ハリコフ)近郊のメレファでは、住宅地がロシア軍の砲撃を受け、学校や文化センター、民間施設などが破壊された。ヴェニアミン・シトフ市長が現地メディアに話した。
市長によると、砲撃は17日午前3時半ごろ発生。民間人の死者はなかったが、兵士数人が死亡したという。
市長は「文化センターが攻撃され、何も残っていない」、「中に人がいた。民間人の犠牲者が出なかったのは幸いだが、軍には死者が出た。民間人は破壊跡から逃げ出し、兵士は病院に運ばれた。学校の火災は消火活動が続けられている」と話した。
ハルキウでもほぼ連日、ロシア軍の砲撃が続いている。
ロシア軍は停滞、協議には大きな隔たりか
西側当局によると、17日にはロシア軍の状況に大きな変化はみられなかった。
ある当局者は、「ロシア軍が何カ所かでわずかに前進しているが、戦略的な突破口は開けていない」と記者団に語った。
この当局者は、「計画どおりに進んでいないだけでなく、持久戦に向けて戦い方を調整してもなお、その戦法もまだ停滞している」と説明。ロシア軍の死者が7000人に上っているとの見方は、「決してありえなくはない」とした。
西側当局は、ウクライナの被害も大きく、「どれだけ持ちこたえられるか」分からないとしている。
和平に向けた協議については、ロシアとウクライナ双方が真剣に臨んでいるが、主張の隔たりは大きく、成果を生むとは言い切れないとした。
プーチン氏が要求を明らかに
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は17日午後、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領と電話で協議した。プーチン氏は、ウクライナとの和平協定に必要だとする要求の詳細を明らかにした。
協議終了から30分もたたず、BBCのジョン・シンプソン世界情勢担当編集長は、エルドアン氏の最側近のイブラヒム・カリン報道官にインタビューした。カリン氏は両首脳の電話協議を聞いていた。
カリン氏によると、プーチン氏の主な要求は、ウクライナの中立化と北大西洋条約機構(NATO)非加盟で、その他にロシアの体面を保つためのものもあったという。
<関連記事>
一方、トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相は、ウクライナとロシアの大統領会談は可能との見方を示した。
チャブシュオール氏は、ウクライナ西部リヴィウで同国のドミトロ・クレバ外相と会談。終了後の共同記者会見で、「和解の問題で合意する素地があれば、両首脳が会談する可能性はある」、「私たちは昨日、喜んで(会談を)主催すると表明した」と述べた。
クレバ氏も、ウクライナとロシアの首脳会談実現に向けて努力することで、トルコと意見が一致したと述べた。また、トルコが和平協定の保証人となる国の1つになることを望んでいると、チャブシュオール氏に伝えたと話した。
国連で被害報告
国連の安全保障理事会が17日開かれ、ウクライナの被害が報告された。
国連によると、侵攻開始からの3週間で民間人1900人が死傷。死者は子ども52人を含む726人に上っている。
世界保健機関(WHO)は、医療施設43カ所への攻撃を確認したと報告した。
国連では、西側諸国とロシアが、異なる人道決議案を出している。ロシア案は、女性と子どもの保護が必要だとし、ウクライナにおける無差別砲撃を非難する内容。西側諸国は、ロシアが「シニカルなゲームを繰り広げている」(バーバラ・ウッドワード英国連大使)などと批判した。
一方、ロシアのヴァシリー・ネベンジア国連大使は、ウクライナが国民を「人間の盾」に使っているなどとする、根拠の示されていない主張を繰り返した。
中国が制裁に懸念
中国の張軍・国連大使は17日の国連安保理で、世界経済の回復が遅れる中でロシアを制裁するのは間違いだと主張した。
張氏は、「制裁発動を望んでも問題は解決されず、むしろ新たな問題を生むことが、事実によって証明されている」と発言。特に開発途上国で、食料やエネルギーの危機を悪化させ、生活に打撃を与えると警告した。
また、中国は各国同様、ウクライナでの停戦を望んでいるとした。
ゼレンスキー大統領がドイツ議会で演説
ウクライナのゼレンスキー大統領は17日、ドイツ議会でオンライン演説をした。
ゼレンスキー氏は、新しいベルリンの壁が築かれており、ヨーロッパが自由と抑圧の間で分断されていると主張。歴史の類似性を示した。
また、ドイツ企業の一部がロシアで事業を続けているとして、怒りを表明。ロシアとドイツ間のガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」については、ヨーロッパを分断する「新たな壁のセメント」だとした。
さらに、ウクライナの欧州連合(EU)加盟にドイツが後ろ向きな姿勢を取り続けているとし、新たな壁の「れんがの1つ」になっていると述べた。
2022-03-18 04:31:41Z
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiJWh0dHBzOi8vd3d3LmJiYy5jb20vamFwYW5lc2UvNjA3OTA0MTbSASlodHRwczovL3d3dy5iYmMuY29tL2phcGFuZXNlLzYwNzkwNDE2LmFtcA?oc=5
No comments:
Post a Comment