原子力発電所をめぐって裁判所が住民側の訴えを認めたケースはこれで11件となり、11年前の福島第一原発事故の後では9件目です。
原子力発電所の運転停止や設置許可の取り消しを求める訴えは、昭和40年代後半から各地の裁判所に起こされましたが、「具体的な危険があるとはいえない」などとして退けられてきました。
平成15年に福井県の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる裁判で、名古屋高裁金沢支部が国の設置許可を無効とする判決を言い渡し、これが住民側の訴えを認めた初めての判決でしたが、最高裁で取り消されました。
平成18年には、金沢地裁が石川県の志賀原発2号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
一方、平成23年に福島第一原発の事故が起きたあとは住民側の訴えを認める司法判断が増えています。
平成26年には、福井地裁が福井県の大飯原発3号機と4号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
また、運転停止を命じる仮処分の決定も相次ぎ、福井県の高浜原発3号機と4号機では平成27年に福井地裁、平成28年には大津地裁が2度にわたって運転停止を命じました。
関西電力は平成28年3月、大津地裁の1回目の決定が出た際に運転中だった3号機の原子炉を停止させ、司法の判断で運転中の原発が停止した初めてのケースとなりました。
その後、運転停止の決定は高裁で取り消され、高浜原発3・4号機は再び運転を始めました。
また、愛媛県の伊方原発3号機では平成29年とおととし1月に広島高裁が2度、運転停止を命じる仮処分の決定を出しました。
2つの決定はその後、別の裁判官の判断で取り消され、伊方原発3号機は去年12月に運転を再開しています。
おととし12月には大阪地裁が、大飯原発3号機と4号機の国の設置許可を取り消す判決を言い渡しました。
設置許可に関して住民側の訴えを認めた判決は、平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来2件目で、福島第一原発の事故後、初めての判断でした。
国は控訴しています。
去年3月には、茨城県にある東海第二原発について、水戸地裁が原発事故が起きた際の避難計画の不備を理由に再稼働を認めない判決を言い渡し、住民側と事業者側の双方が控訴しています。
2022-05-31 07:30:11Z
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