ジョンソン英首相が身内の離反を止められず、辞任に追い込まれた。直前まで続投の意志を見せてきたが、新型コロナウイルス規制違反の官邸パーティー問題や保守党幹部の不祥事についてうその説明を重ね、党内での信頼失墜を招いた。ウクライナ問題で対ロシア強硬路線を先導してきた英国で権力の空白が生じることになり、欧米の足並みが乱れる可能性もある。(ロンドン・加藤美喜)
◆「もうたくさん」…保健相も、財務相も辞表提出
「(首相続投は)私がそうしたかっただけでなく、私の仕事であり、義務であると感じていた」
ジョンソン氏は7日に辞意表明した際、保守党の歴史的な大勝だった2019年の総選挙に言及し、最後まで強気の姿勢を貫いた。「(首相という)最高の仕事を辞めるのは悲しいが、仕方がない」とも語った。
しかし7日朝も雪崩のような政権高官らの辞表提出が続き、孤立無援に陥っていた。英BBCの画面に表示された辞任者数のカウンターは50を超えた。
「どこかの時点で私たちは『もうたくさんだ』と言わねばならない。今そのときが来た」。ジャビド保健相は6日、下院で辞任の声明を読み上げ、ジョンソン氏に退陣を迫った。厳しい言葉が続き、ジョンソン氏は苦しそうな表情を見せた。スナク財務相も5日にジョンソン氏あての辞表で「国民は、正しく、有能かつ誠実な政権運営を期待している」と訴えた。スナク、ジャビド両氏の主要2閣僚の辞任は大打撃となった。
◆わいせつ訴え知りながら幹部登用した疑い、コロナ禍で官邸で飲酒も
閣僚らの「辞任ドミノ」が加速したのは、与党保守党の院内副幹事長ピンチャー氏の不祥事を巡ってジョンソン氏が謝罪した直後だった。ピンチャー氏は会員制クラブで男性にわいせつ行為を行った不祥事で先月辞任していた。党の規律を担当する幹部の不祥事というだけでなく、ジョンソン氏が過去に同様の被害の訴えがあったことを知りながら、要職に起用した疑いが浮上。説明が二転三転する不誠実な対応に対し、党内外から批判が高まった。
コロナ禍における官邸の「飲酒文化」が批判されたパーティー問題では、ジョンソン氏自身を含む80人以上が罰金を払い、政府の調査報告書は首相の「指導力の欠如」があったと結論付けた。5月の地方選で保守党は計約500議席を失う敗北。6月の下院補欠選挙でも議席を失い、求心力は低下の一途だった。
◆英国の対ロシア強硬路線に影響も
ジョンソン氏は、ウクライナ侵攻後に2回にわたってキーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領と個人的な信頼関係を築いた。徹底抗戦を続けるゼレンスキー政権を支える方針を鮮明にし、対ロシア強硬路線を主導してきた。辞任後も、多数の英国国民が支持している対ロ強硬路線は変わらないとみられるが、早期停戦を模索するフランスやドイツなどとの力学が変わる可能性もありそうだ。
歴史的なインフレや経済の失速、コロナ対策など国内の課題も抱える。保守党の新党首を選ぶ手続きは少なくとも数週間かかる見通しで、この間、英国政治は不安定となる。ジョンソン氏の後任候補にはすでに司法長官が名乗りを上げているほか、複数の閣僚経験者の名前が浮上している。
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2022-07-07 21:00:00Z
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