パレスチナ自治区ガザ地区の侵攻を続けるイスラエル軍は2日、ガザ市を完全包囲したと発表した。他方、国連や世界保健機関(WHO)はガザ地区内の人道状況の急激な悪化に強い懸念を示した。
パレスチナ国防軍(IDF)の報道官、ダニエル・ハガリ少将は声明で、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの前線基地や司令本部などの拠点に対して、攻撃を続けていると述べた。
現在のガザ市内に民間人がどれだけ残っているかは不明だが、2日現在の市内の映像からは、ひとけのない道路や建物が広範囲にわたり破壊されている様子が見て取れる。
ガザ地区北部にあるガザ市は10月7日にハマスがイスラエルを奇襲した時点では、地区内で最も人口が密集していたが、イスラエル軍は13日に住民に対して、ガザ地区南部へ移動するよう通告していた。
ハマスが運営するガザ地区の保健当局によると、ガザ地区では10月7日以来、9061人が殺害された。
一方でイスラエルは、ハマスによって拉致されたことが確認された人数は242人に増えたと明らかにした。中には女性や子供、高齢者が含まれるという。
イスラエル軍の通告を受けてガザ南部へ避難した人のうち、負傷者や外国のパスポートを持つ人たちが1日から少しずつラファ検問所を通過してエジプト側へ入っている。エジプト当局によると、2日には負傷したパレスチナ人21人と、外国パスポートの所持者344人がエジプト側に入った。子供72人も含まれるという。
イギリス外務省は人数は明示しないながら「さらに複数のイギリス市民」がガザからエジプトへ入ったと明らかにした。アメリカ政府は、二重国籍のアメリカ市民74人がラファ検問所を通りガザを脱出したと発表した。
AFPによると、複数の救急車がラファ検問所を通過した負傷者をエジプトの仮設病院に運んでいる。
他方、国際医療NGO「国境なき医師団(MSF)」によると、ガザ地区内には依然として2万人以上の負傷者がいる。
MSFは、ガザから避難する人数をさらに拡大し、戦闘を停止し、人命救助に不可欠な支援のガザ搬入をいっそう増やすよう呼びかけている。ガザ地区ではさまざまな必需品の不足から、人道危機の激化が懸念されている。
「これ以上何人が犠牲になるのか」=国連
ガザ地区北部ジャバリア難民キャンプで1日、大きな爆発があった。前日にはこのキャンプにイスラエル軍の空爆があり、数十人の死者が出たと報じられた。
動画や画像では、数百人の人が、倒壊した集合住宅の下敷きになっている生存者を探す様子が確認できる。
ハマスが運営する保健当局は、ジャバリア難民キャンプで起きたイスラエル軍の空爆で数十人が死亡したとしている。BBCは死傷者の数を検証できていない。
UNRWAによると、ジャバリア難民キャンプを含め、ガザ地区内で国連が運営する学校4カ所が攻撃を受けた。
4カ所の学校には2万人近くが避難しており、北部にあるアル・シャティ(ビーチ)難民キャンプの学校では子供1人が死亡したという。
「さらに南では、アル・ブレイジ難民キャンプでは、シェルターとして使われている2つの学校が攻撃された。2人が殺され、31人が負傷したとの情報がる」とUNRWAは述べた。
UNRWAは現在ガザ地区内で運営する数十カ所の施設で、約70万人を保護しているという。
UNRWAによると、10月7日に戦争が始まって以来、ガザ地区内にあるUNRWAの建物50棟近くが影響を受け、これまでにガザで職員72人が殺害された。その多くは家族と共に犠牲になったという。
UNRWAは2日に声明で、「これ以上何人が犠牲になるのか。これ以上どれだけ悲嘆と苦しみが続くのか。人道のための人道的停戦は、とうに実施されていなくてはならない」と強調した。
「恐ろしさを表す言葉がなくなりつつある」=WHO事務局長
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は2日、ジュネーヴで記者会見し、ガザ地区内の状況は「表現しようがない」として、人道援助の緊急再開を強く訴えた。
「亡くなった人を助けるには手遅れだが、生きている人は助られる」と事務局長は述べた。
ガザ地区内の病院では、負傷者が廊下に横たわり、遺体安置所では遺体があふれ、医師たちは麻酔薬なしで手術をせざるを得ない状態だと、テドロス事務局長は強調した。
「ガザで繰り広げられている恐ろしい状況を語る言葉が、なくなりつつある」とテドロス氏は言い、「戦闘に人道上の一時休止が必要だ。理想的には停戦が必要だ。我々が制約なしにガザに入れるようになること、安全な通行が保証されることが必要だ」と呼びかけた。
WHOによると、ガザ地区にある36カ所の病院のうち14カ所はすでに機能できなくなり、ガザ市内とガザ北部にある23カ所の病院に対してはイスラエル軍が退避を命令している。
退避を命令されたガザ市のアル・クッズ病院を運営するパレスチナ赤新月社によると、2日にはイスラエルの攻撃で病院の前に立っていた子供と若い男性が負傷し、重体という。
病院の空調システムや貯水槽のひとつも破損したとされ、パレスチナ赤新月社はイスラエル国防軍が「無差別に攻撃」していると非難した。
WHOによると、今回の戦争が始まる前は、ガザから毎日約1000人の患者が透析など特別な治療をうけるため、イスラエルやヨルダン川西岸地区へ運ばれていた。10月7日以来、それは不可能となっている。
WHOはさらに、収容能力の限界を超えているシェルターで感染症が広がることを懸念している。すでに、呼吸器系の感染症や下痢、皮膚病などの発症が増えているという。
WHOの東地中海地域担当緊急ディレクター、リック・ブレナン氏は、「医療の必要性は一気に激増しているのに、それを提供するためのこちらの能力が激減している」と話した。
<解説>イスラエル軍はどう終わらせるつもりか――ジェレミー・ボウエンBBC国際編集長(イスラエル南部)
イスラエル軍はとてつもない課題に直面している。
イスラエル軍は今の事態をどうやって終わらせるつもりなのか? これが最大の疑問にひとつだ。
イスラエル政府は、ハマスを地上から消滅させたいのだと言うのは別にして、今の状態からいったい何を得ようとしているのか、答えを示すよう強い圧力にさらされている。
しかも、銃を持った男たちを消滅させるのも大変だが、ひとつの考え方、概念を消滅させるのは、もっともっと大変だ。
シリアやイラクにおけるイスラム聖戦主義者との戦いを見ても、戦闘員の多くは殺されたが、彼らの死は「大義」のために次の戦闘員をひきつけて集める宣伝材料、募集の道具として使われた。
しかし、イスラエルが自分たちの軍事的課題を満足させる状態にたどりついたと仮定して、その後に、わずか365平方キロの面積しかない土地にいる250万人をいったいどうやって統治するのか。戦争によって壊滅的な被害を受けている土地で。
これは、とてつもなく大変な課題となる。
2023-11-03 04:13:54Z
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