[東京 17日 ロイター] - 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日午前、日本の新型主力ロケット「H3」2号機を打ち上げ、所定の軌道投入に成功した。世界の宇宙開発競争が厳しさを増す中、H3は当初の開発計画から大幅に遅れており、打ち上げの成功数や価格で米スペースX社に大きく先行されている。日本は1号機の失敗から1年で挽回、巻き返しを図りたい考え。
H3は午前9時22分に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、1号機で失敗した2段目エンジンが正常に着火して燃焼。搭載したロケット性能確認用の模擬衛星と超小型衛星2基も分離した。
午後に会見したJAXAの山川宏理事長は「計画通りに飛行」して機体を所定の軌道に投入したと発表、「こうした打ち上げ結果を報告できたことに安堵(あんど)している」と語った。「H3ロケットは日本が宇宙活動の自立性を確保すること、同時に国際競争力を確保するのが目的で、それに向けて大きく前進した」と述べた。
ただ、岡田氏は製造・運用・発射時のトラブルのたびに手直しを繰り返しており、「まだ非常に手のかかる状態。これからが勝負。しっかり育てていきたい」と話した。新津氏も「細かくデータを見ていくと、あの設計で思っていたものとは多少違う動きをしている、もう少し改善がいるなどの点がいろいろ出てくると思う」と語り、そうした点に対策を取り、打ち上げの安定性や信頼性を向上させたいとした。
H3は、高い打ち上げ成功率を誇ってきた現在の主力ロケット「H2A」の後継機で、JAXAと三菱重工が2014年から共同で開発。災害時の観測や気象情報の収集、偵察などを行う国の人工衛星の宇宙への輸送、世界で高まる商業衛星打ち上げ需要の受注獲得のため2000億円余りを投じてきた。特長は打ち上げ費用の安さで、一定条件下ではスペースXともほぼ互角に戦え、H2Aの半額となる約50億円を目指している。米国主導の月探査計画「アルテミス計画」で物資輸送も担う予定。
三菱重工元技師長でH3の開発にも携わった東京理科大学の小笠原宏教授は「これでようやくスタートライン(に立った)という感じだ。ここまで来るのに時間はかかったが、これから世界中から引き合いが相当くると思う」と述べた。
当初1号機の打ち上げは20年度を予定していたが、主エンジンの開発が難航して延期を繰り返した。開発計画も見直され、大幅に遅れている。1号機は23年3月に打ち上げたが、2段目エンジンが着火せず失敗。1年かけて原因究明と点火装置を改良するなどの対策を講じた。
一方、スペースXはすでに、22年は61回、23年は96回の打ち上げに成功している。
会見に同席した三菱重工の江口雅之執行役員は、「造り始めたばかりなのでコストダウンは目標に達していない。10号機か15号機くらいで競争力が出るような形に持っていきたい」と述べ、「円安の追い風も受けて国際競争力のある製品にしていきたい」と語った。生産能力を現在の年5─6機から10機程度まで増やし、宇宙事業の売り上げを「ロケット関係で2─3割増やしたい」という。
(白木真紀 取材協力:小宮貫太郎 編集:久保信博)
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2024-02-17 07:37:01Z
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