香港の中国復帰記念日である7月1日、香港警察が抗議デモ参加者たちを取り締まっていた。旗で警告文を表示していた。
Tyrone Siu/Reuter
香港で治安を乱す反政府的な活動や団体を取り締まる「香港国家安全維持法」(国安法)が、6月30日に全会一致で可決、7月1日に施行された。香港では、政府や国安法により実質デモが禁じられていたが、この日、大規模な抗議デモが発生した。
日本では、東京の衆議院議員会館で日本在住の香港人による会見が開かれた。
“民主の女神”周庭氏らの活動団体が「解散表明」
国安法の成立を受け、香港の民主化団体や独立派団体が次々と解散を表明した。
2014年の雨傘運動の中心メンバーである周庭(アグネス・チョウ)氏や黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏が所属する「香港衆志(香港デモシスト)」も6月30日に解散を表明。
香港の問題について日本語で発し続けていた周庭氏は、Twitter上で「私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。生きてさえいれば、希望があります」と言葉を残した。
黄之鋒氏は「香港で民主化運動をすると、命に関わる」とした。
7月1日、香港の中国復帰記念式典で祝う林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真右)。
Anthony Kwan /Getty Images News
7月1日は、香港の中国への返還記念日にあたる。香港では朝から記念式典が行われ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官らが出席した。
新型コロナウイルスへの感染防止を理由に、香港政府は現在51人以上の集会を禁じているが、それに加えて国安法が施行されたにも関わらず、この日は大規模な抗議デモが発生した。
「香港独立」の旗を掲げたとして、国安法を初めて適用した逮捕者が出た。その後も国安法を理由に計9人が逮捕された。
7月1日、香港では政府に抗議するデモが発生した。
Tyrone Siu/Reuter
なお、国安法施行後初の逮捕者のニュースは、中国でも大々的に報道されたのか、インターネットでの注目ニュースやキーワードランキングで1位になっていた。普段、中国では香港デモに関してそこまで大きく報道されることは少ない。今回、逮捕者が出たというニュースは一種の見せしめとなっている。
中国の検索サイト最大手「百度(バイドゥ)」では、ホットワードランキングの1位に、国安法での初の逮捕者に関するニュースが表示されていた。
出典:「百度(バイドゥ)」よりキャプチャ
香港の民主派のある区議会議員は、声をひそめて、国安法施行初日を振り返った。
「初日に9人が国安法で逮捕され、独立をうたった旗を持った方が逮捕された他に、『光復香港 時代革命』(香港を取り戻せ、今こそ革命だ)といった単なるスローガンの旗を持っているだけでも逮捕されました。
一番恐ろしいのは、全く香港の独立とは無関係でも逮捕されたこと。警察による街頭検査で、カバンに中華民国(台湾)の国旗が入っていて拘束された人がいました。掲げたわけではありません。
また、香港各地で警察による街頭検査があり、スマホのロックを解除させられて中身をチェックされた人もいました。今まではそこまですることはありませんでした」
日本在住香港人たちが、逮捕覚悟で会見
7月1日、東京の衆議院議員会館では、香港国安法成立を受けて、日本在住の香港人団体が緊急会見を開いた。
撮影:吉田博史
東京の衆議院議員会館では、国安法の成立を受け、急遽、日本在住香港人による団体「香港の夜明け」が「香港返還24年目、一国二制度の終焉〜国家安全法導入に対する国際的連帯の必要性〜」と題した会見を開いた。
登壇した香港人男性たちは、国安法による危険は、日本にいても及ぶ可能性があるとした。
「今ここで記者会見を開いていること自体、国安法に違反している。犯罪者として認定される覚悟をした上で記者会見を開きました」
さらに別の男性は、あまりに適用範囲が曖昧だとした。
「取り締まり対象が、広範囲かつ曖昧な条文なため、中国政府はその気になれば誰でも該当者にすることができる」
過去に香港デモに参加した男性は、言葉を選びながら訴えた。
「私自身にとって特別な思いがある。(香港で)自分の目の前で何人か逮捕されている。今あきらめたら、逮捕された人たちへの苦しみの感情がわいてくる。今私は日本で就職しているとはいえ、香港は故郷。香港に戻ること自体が困難かもしれない。できる限り、こちらで香港をサポートをしたい。国安法が成立したいま、余計にそう思う」
会見には、香港問題について支援する、国民民主党の山尾志桜里・衆議院議員、自民党の中谷元・元防衛相、自民党の山田宏・参議院議員が参加した。
現在、台湾、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどと同様に、香港市民の移住など受け入れの議論が、日本でも起きている。
日本政府は「遺憾の意」を表明したものの、具体的な動きは現時点ではまだなく、議論の段階だ。
中谷元防衛相は、「(受け入れの)窓口を設けるようなこととか、政府としてやれるところはやっていいし、民間でやれるところはやってもいい。今後検討していかないといけない。受け入れてどうするのかなど、そこまで準備をしていかないといけない。外務省や内閣にも相談したい」と話すにとどめた。
香港の状況は緊急を要する状況だが「(時期的なめどは)まだ決められない」(山尾議員)とした。
香港人の中には、すでに政治的な話題を避けるようになった者も出始めている。また、民主派団体、独立派団体が解散を表明したように、国安法は香港人の思考や行動などに、見えないプレッシャーを与えている。“中国化”を望まない香港の人々にとって、現状、打つ手がもはやないのは確かだ。
(文・吉田博史)
2020-07-01 23:00:00Z
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