下地達也
「ヘアドネーション」(髪の寄付)をテーマに、人権について考える出前授業が、和歌山市立加太中学校の体育館であった。生徒ら約30人が参加した。
講師は、髪の寄付を受け、18歳以下の子どもたちにウィッグ(かつら)を贈るNPO法人「JHD&C(ジャーダック)」(大阪市)の職員。生徒はこのNPOの活動を伝える新聞記事を事前に読んで19日の授業に臨んだ。授業中にはウィッグを試着して話を聞いた。
同NPOの代表理事・渡辺貴一さん(50)は、寄付するのに必要な髪の長さ(31センチ以上)や、医療用ウィッグができるまでの工程を説明したり、和歌山刑務所の受刑者がボランティアとして寄付された毛髪の仕分けをしていることなどを紹介したりした。
同NPO職員の吉田薫さん(38)は授業中に帽子を脱ぎ、「私も当事者の一人」と頭髪のない姿を見せた。小学生のころから脱毛症に悩んでいた。大浴場などウィッグを外す場所でじろじろと見られてしまうことや、パートナーに打ち明けたときに自然に受け入れてくれた体験談などを話した。授業の後半では、ウィッグを着けた姿で舞台に登場。趣味のダンスの振り付けを生徒に教え、一緒にポーズを決めた。
渡辺さんは、女性の髪は男性より長い、性別によって制服は決まるといった先入観にも触れ、服や髪形を自分らしくする「表現の自由」があると指摘。「見た目の問題は答えがない。今日知ったことの向こう側を自分の頭で考えてほしい」と生徒たちに呼びかけた。
授業に参加した中西一惺(いっせい)君(3年)は「実際にウィッグを使う吉田さんの話や試着を通して、ウィッグがあってもなくてもその人であることに変わりないと思った。自分にできることは何か考えたい」と話した。(下地達也)
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