知床半島沖で観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故は23日で発生から2か月となった。ウトロ漁港(北海道斜里町)を発着する小型観光船は16日に営業を再開。客足は事故前には及ばないが、知床の自然を間近に味わえる小型船の人気も根強い。現地では日常を取り戻す努力が続いている。(桜井啓道)
「うわ、すごい迫力」。22日午前10時頃、漁港を出た小型観光船「DOLPHIN3」が、港近くの断崖に近づくと、さっそく乗客数人が声を上げた。全員が乗船時に身につけたオレンジのライフジャケット姿で、高い断崖を見上げたり、細く流れる滝の写真を撮ったりした。
出航から30分ほどして名所の一つ「カムイワッカの滝」に近づいた時、船内に「クマがいますよ」と放送が流れた。滝の麓に1頭が歩いているのを双眼鏡で発見した乗客は、「野生を見るのは初めて」と喜んだ。約1時間40分のツアーでは子グマ2頭を含む計5頭が姿をみせた。ある夫婦は船上で「こんなに出てくるなんて」と驚いた様子だった。
航行中は船が揺れるたびに、近くに漁船が通ったからなどと船長が詳しく説明した。釧路市から参加した会社員の男性(35)は「安心して楽しむことができた」と話した。ニューヨーク在住の参加者も「来ていいのかという迷いはあったが、思い切って参加した。不安なくツアーを終えられたし、とても楽しめた」と振り返った。
今季の客足は20人弱と例年の半分ほどだったが、この日の乗客は31人。運航する「知床クルーザー観光船ドルフィン」の営業部長を務める森和基さん(39)は「事故前の日常にはほど遠い状況だが、大自然を味わえるこの小型観光船ツアーの火を絶やさないように頑張りたい」と話した。
知床斜里町観光協会によると、ウトロ地区は観光船と半島を陸上から回るツアーが観光の目玉。屋外が中心でコロナ禍でも人気だったが、沈没事故で客数は前年から3~4割減ったという。
ウトロ漁港を発着する小型観光船で作る地元の協議会は、今季の運航開始を前に、トラブルの際に救助が遅れる単独出航を避けることや、出航中止の基準などを盛り込んだ共通ルールを作成した。現在は、2事業者が、行方不明者の捜索が続く海域を避けた、短いルートでツアーを回っている。
観光協会の新村武志事務局長(55)は「ウトロは道外のお客さんも多い。夏休みにどのぐらい道外から予約が入るかが、観光回復のカギを握る」と話した。
2022-06-23 22:45:00Z
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