ブランドン・リヴジー、マデリン・ハルパート(ニューヨークの法廷から)
ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁で26日、ドナルド・トランプ前大統領が在任中の2019年にコラムニスト、E・ジーン・キャロル氏を中傷しその名誉を毀損(きそん)したことについて、計8330万ドル(約123億4000万円)の損害賠償を支払うよう、陪審団が評決を下した。連邦地裁は昨年5月にすでに、前大統領が1990年代にキャロル氏を性的に暴行したと認定していた。
連邦民事訴訟において陪審団が命じた損害賠償額は、補償のための1830万ドルと懲罰的賠償額6500万ドルの合計。補償的損害賠償は、前大統領がキャロル氏を中傷し、名誉を傷つけ、精神的苦痛を与えたことに対するもの。懲罰的賠償額は、トランプ前大統領が今後もキャロル氏を中傷・攻撃し続けるのを阻止することを意図してのもの。
男性7人と女性2人からなる陪審団は、3時間弱の評議で今回の評決に至った。
キャロル氏は評決を受けて、「これは、打ちのめされても立ち上がるすべての女性にとって素晴らしい勝利だ。同時に、女性をいじめて押さえつけようとしたすべての横暴な者にとって、巨大な敗北だ」と声明で述べた。
キャロル氏を支えたロバータ・キャプラン弁護士は声明で、「本日の評決は、この国では法律が全員に適用されることを示した。相手が金持ちだろうと有名人だろうと、大統領経験者だろうと」と述べた。
トランプ前大統領は、この裁判を「魔女狩り」と呼び、評決は「まったくばかげている!」とコメント。必ず控訴すると強調している。
連邦地裁のルイス・キャプラン裁判長はこの裁判であらかじめ、陪審団に対し審理の難しい性質を念頭に、お互いで話し合う際にも本名を使わないよう助言していた(キャプラン判事は、ロベルタ・キャプラン弁護士とは親類ではない)。
この日の結審にあたっても、裁判長は陪審団に、それぞれ自分の経験を話すことは自由だが、この裁判の陪審員だったことは公表しない方が良いと思うと忠告した。
トランプ前大統領は繰り返し、自分は何の問題行動もしていないと強調し、キャロル氏とは会ったこともないと主張している。
しかし評決後に、自分のソーシャルメディアで評決を非難した際、キャロル氏への直接的な攻撃は避けていた。
「どちらの評決にもまったく同意しない」と前大統領は書き、「私と共和党に集中してバイデンが支持した魔女狩りについて、控訴する」、「この国の司法制度は、たがが外れていて、政治的な武器として使われている。連中は修正第1条の権利をぜんぶ取り上げた。これはアメリカじゃない!」などと主張した(編集注:太字は原文ではすべて大文字)。
昨年の民事裁判でマンハッタンの連邦地裁はすでに、前大統領が1990年代にニューヨーク市内のデパートの試着室で、雑誌コラムニストのキャロル氏を性的に暴行したと認定していた。
その裁判の陪審団も、前大統領がキャロル氏の証言をうそだと中傷したことについて名誉毀損だと認め、約500万ドルの損害賠償の支払いを命じていた。
26日に結審した今回の名誉毀損訴訟は、前大統領が2019年にした別の発言に関するもの。
この日の評決の読み上げより先に、前大統領は法廷を後にしていた。その直前には、担当のアリナ・ハバ弁護士に対して裁判長が、不規則発言を注意していた。
発言をやめるよう裁判長に指示された後も話し続けたハバ弁護士に対し、キャプラン裁判長は「あなたはあと少しで収監される、その瀬戸際にいる。いいから座りなさい」と命じていた。
これより先に裁判長はすでに、法廷内で前大統領が「これはやらせだ」「魔女狩りだ」などつぶやいたことを問題視し、続くようなら退廷を命じると警告していた。
キャロル氏の弁護団はこの日の最終陳述で、前大統領がキャロル氏に対する性的暴行を否定し続けたことで、キャロル氏の名誉は著しく傷つけられたと主張。「この裁判は、ドナルド・トランプに罰を与えるためのものでもあります(中略)ここでついに彼に、そうしたまねをやめさせるための裁判です」と述べていた。
弁護団は裁判中、前大統領の発言をきっかけに、キャロル氏は大勢から殺害や強姦を脅され、オンラインでひどく中傷されるようになったと主張していた。
これに対して前大統領側は、キャロル氏への脅迫は前大統領の責任ではないとして、原告側の主張は「穴だらけ」なのでトランプ氏がこれ以上の損害賠償を払う必要はないと主張していた。
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トランプ前大統領はこの民事訴訟とは別に、4件の刑事事件で計91件の不法行為について起訴されている。アメリカで大統領経験者が、刑事被告人となるのは史上初めて。
それに対して前大統領は一貫して、自分に対する数々の訴訟はジョー・バイデン大統領とその仲間が指揮しているものだと主張している。
今年11月の大統領選に向けて、野党・共和党の候補選びではトランプ前大統領が優勢となっており、民主党候補になる見通しのバイデン大統領と、4年前に続いて再び対決する可能性が高い。
米ジョン・ジェイ・刑事司法カレッジのドミトリー・シャクネヴィッチ教授はBBCに、少額の賠償額では前大統領による中傷をやめさせることができないと、キャロル氏の弁護団は陪審団を説得したのだと説明した。
「陪審団は要するに、この金持ちは(中傷を)やめようとしないので、やめさせるには(経済的な)痛みを与えるしかないのだと言っている」と教授は話し、今回の賠償額は「非常に大きい額だ」と述べた。
米リッチモンド大学のキャロル・トバイアス教授(法学)はBBCに対して、「トランプ氏は裁判長と陪審員と、相手側の弁護団、そして特に原告のキャロル氏に、敬意を欠いた態度をとり続けた」ことが、原告の主張を裏付ける結果となり、「高額の損害賠償額が適切で、相応」だと陪審団が判断する理由になったかもしれないと指摘した。
(追加取材:マックス・マッツァ、ケイラ・エプスタイン)
2024-01-27 02:45:52Z
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