東京都の専門家の会議は、都内の新型コロナウイルスの感染状況と医療提供体制についていずれも最も高い警戒レベルとしました。
専門家は「医療提供体制がひっ迫し危機的状況に直面している。このままの状況でいくと破たんの危機にひんする可能性が非常に高い」などと述べて強い危機感を示し、新たな陽性者と重症患者の増加を防ぐことが最も重要だと指摘しました。
東京都のことし最後の「モニタリング会議」は30日都庁で開かれ、都内の感染状況と医療提供体制を先週に続きいずれも最も高い警戒レベルとしました。
このうち、感染状況について専門家は、新規陽性者の7日間平均が「3週連続で急速に増加している」と指摘しました。
そのうえで、「対策の効果が出始めるには2、3週間を必要とするため、より強い対策をただちに実行する必要がある」と述べました。
一方、医療提供体制について専門家は「ひっ迫し危機的状況に直面している」と指摘しました。
そのうえで、新たな陽性者の増加比がこのまま2週間継続すると、感染確認は1日あたり1136人になり、入院を必要とする患者の割合が今と変わらなければ、2週間を待たずに、都が医療機関に対して準備を要請している4000床を超える可能性があると分析しました。
そして、「このままの状況でいくと破たんの危機にひんする可能性が非常に高い」などと述べて強い危機感を示し、新たな陽性者の増加をただちに抑制し、重症患者の増加を防ぐことが最も重要だと指摘しました。
東京都によりますと、30日の「モニタリング会議」で示された分析で、都が新型コロナウイルスの感染状況と医療提供体制を見るうえで用いている指標は、初めて7つすべてで前の週を上回りました。
7つのうち、感染状況を見る指標は、いずれも7日間の平均で新たな陽性者の数と、東京消防庁の電話相談窓口に寄せられる発熱などの相談件数、新たな陽性者のうち感染経路がわからない人の数などです。
また、医療提供体制を見る指標は、PCR検査と抗原検査の陽性率の7日間平均、5つの医療機関に救急患者の受け入れを要請したものの搬送先が見つからなかったり、搬送先を決めるのに時間がかかったりした「東京ルール」の適用件数の7日間平均、それに入院患者の数と重症患者の数です。
30日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。
【感染状況】
新たな感染の確認は、29日時点の7日間の平均がおよそ751人で、前の週からおよそ134人増えました。
増加比はおよそ123%と非常に高い水準です。
専門家は「急速に増加している。これまでに経験したことのない状況だ。複数の地域や感染経路でクラスターが頻発しており、感染拡大が続いている。通常の医療がひっ迫する状況はさらに深刻となっていて、新規陽性者数の増加を徹底的に防御しなければならない」と呼びかけました。
その上で「現在の増加比が2週間継続すると、今のおよそ1.5倍の1日1136人の新規陽性者が発生し、入院患者の比率が変わらなければ2週間後を待たずに確保した病床を超える可能性もある。破綻の危機にひんしてる状況だ」と強い危機感を示しました。
さらに、「感染力が強いとされるイギリスや南アフリカから発生した変異したウイルスによる影響を注視する必要がある」としています。
28日までの1週間で確認された5007人を年代別の割合でみると、20代が最も多く26.9%でした。
次いで30代が20.3%、40代が15.9%、50代が13.5%、60代が6.5%、10代が5.0%、70代が4.8%、80代が3.6%、10歳未満が2.5%、90代以上が1.0%でした。
およそ1か月前と比べると20代、30代の割合が増加していると分析されました。
また、65歳以上の高齢者は前の週より27人増えて599人となりました。
専門家は「重症化リスクの高い高齢者の家庭内感染を防ぐためには、外で活動する家族が感染しないことが最も重要だ。無症状であっても感染リスクがあることに留意する必要がある」と指摘しました。
一方、感染経路がわかっている人のうち家庭内での感染は49.3%で、感染経路別では22週連続で最も多くなりました。
年代別にみると80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多くなりました。
80代以上では、病院や高齢者施設などの施設内での感染が59.1%と最も多くなっています。
このほか、感染経路がわかっている人のうち、施設内は16.2%、職場内は14.0%、会食が7.2%、夜間営業する接待を伴う飲食店は1.4%でした。
専門家は、日常生活のなかで感染するリスクが高まっていて、感染経路が多岐にわたっていると分析しています。
そのうえで、「市中における感染リスクの増加に伴い、複数の病院や高齢者施設で職員や患者、利用者の感染例が多発している。院内や施設内での対策の徹底が必要だ」と指摘しました。
このほか、友人や家族との旅行、大人数でのキャンプ、忘年会、マスクなしでの会食、大学の運動部の合宿所を通じての感染例が報告されていることを明らかにしました。
そして、「正月や新年会、成人式などで人と人が密に接触してマスクを外し、長時間または深夜にわたる飲食や飲酒、大声で会話をするなどの行動は感染リスクが著しく高まる」と指摘しました。
また、「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人の7日間平均は29日時点でおよそ476人です。
前の週よりおよそ113人増え、これまでで最も多くなりました。
増加比はおよそ134%と高い水準で推移しています。
感染経路が分からない人を年代別にみると、30代で70%を超え、20代と40代、50代は60%を超え、60代は50%を超える高い水準となりました。
専門家は「感染経路が分からない人がいまの比率で増え続けると、4週間後には今のおよそ3.2倍の1日1537人の感染経路不明者が発生する。今が瀬戸際であり、ただちに、より強力な感染防止策を実行する必要がある」として強い危機感を示しました。
このほか、28日までの1週間で確認された新規陽性者のうち19.1%が無症状でした。
専門家は「無症状や症状の乏しい人の行動範囲が広がっている。引き続き、感染機会があった無症状者を含めた集中的な検査などの体制強化が求められる」と指摘しています。
都は、都外に住む人がPCR検査のため、だ液を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが214人いました。
【医療提供体制】
検査の「陽性率」は、28日時点で8.4%と前回の7.3%から上昇しました。
先月初旬から連続して増加しています。
一方、入院患者は、29日時点で2274人で、先週の今月23日の時点より171人増えています。
専門家は「入院患者は非常に高い水準が続いていて、医療提供体制がひっ迫し、危機的状況に直面している」と指摘しました。
また、入院患者の受け入れ体制がひっ迫して、受け入れ調整が難航していることも明らかにし、「特に透析患者や小児患者の受け入れ調整が難航している。待機を余儀なくされる例が多数生じていて、休日体制となる年末年始にはさらにひっ迫する。ただちに新規陽性者数を大幅に減少させるためのより強力な感染防止対策が必要だ」と訴えました。
このほか、29日の時点で自宅で療養している人は2768人と前回より900人近く増えていて、専門家は「自宅療養者の急激な増加で健康観察を行う保健所の業務が増大している」と指摘しました。
また、都の基準で集計した29日時点の重症患者は前回より15人増えて84人でした。
年代別にみると、30代が1人、40代が4人、50代が8人、60代が24人、70代が32人、80代が14人、確認中が1人でした。
性別では、男性は65人、女性は18人、確認中が1人でした。
専門家は「新規陽性者のおよそ1%が重症化する現状が続けば、重症用の病床の不足がより顕在化する。医療機関は救急の受け入れや予定している手術の制限を余儀なくされていて、年末年始の休み明け以降、通常の医療の再開に対する影響が強く危惧される」と指摘しました。
28日までの1週間で都に報告された亡くなった人は前の1週間より17人増えて46人でした。
このうち42人は70代以上でした。
からの記事と詳細 ( 「医療提供体制は危機的状況」|NHK 首都圏のニュース - NHK NEWS WEB )
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