パレスチナ自治区ガザ地区南部への攻勢を強めるイスラエル国防軍(IDF)は6日、10月のイスラエル奇襲を首謀した1人とされるイスラム組織ハマス指導者の自宅を包囲した。ベンヤミン・ネタニヤフ首相が発表した。一方、支援機関はガザ地区への人道支援が「事実上ゼロ」になり、飢餓や病気のまん延が懸念されているとしている。こうした中、国連事務総長は安全保障理事会に対して、人道的停戦を宣言するよう要請した。
ネタニヤフ首相によると、IDFはガザ地区のハマス・トップ、ヤヒヤ・シンワル氏の自宅を包囲した。
「私は昨夜(5日)、我が軍はガザ地区のどこにでも到達できると話した。そしていま、IDFはシンワル氏の自宅を包囲している」と、ネタニヤフ氏は事前に収録されたビデオ声明で述べた。
「彼の自宅は要塞ではないかもしれないし、本人は逃れられるだろうが、我々が彼を捕まえるのは時間の問題だ」
イスラエルはシンワル氏が、ハマスによる10月7日のイスラエル奇襲を首謀した1人だと考えている。
BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は、シンワル氏が姿を消したと報告している。数千人のイスラエル兵は、ドローン(無人機)や電子盗聴器、情報提供者からの支援を受けながら同氏の居場所を突き止めようとしている。
シンワル氏はガザ地区の地下に張りめぐらされたハマスのトンネル内に追い詰められている可能性もある。
イスラエル軍の戦車、ガザ最大の難民キャンプを包囲か
BBCのラシュディ・アブアルーフ記者は、目撃者の話として、イスラエル軍がガザ地区北部のジャバリア難民キャンプを四方八方から取り囲み、同キャンプへの空爆も強めていると報告している。
同キャンプ最大の居住区の一つアル・ファルジャ地区で暮らすハリル・アブ・カマル氏は、「爆発が2日間止んでいない。数十人が死亡し、がれきと化した集合住宅の下敷きになっている人もいる」と話した。
「けさ、自宅を爆撃された隣人を助けに行った私のきょうだいが空爆で死亡した。あまりに危険なので家族の墓地に埋葬することはできず、自宅近くの庭に埋葬するしかなかった」
「生きている人にも、死者にも、もはや尊厳など存在しない」と、アブ・カマル氏は付け加えた。
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人道支援が「事実上ゼロに」と支援機関、イスラエルは「最小限の」燃料搬入認める
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区への人道支援が「事実上まったく何もなくなった」とし、同地区にいる約220万人の間で飢餓や病気が広まることへの不安が生じていると主張している。
また、圧力をかけているにも関わらず、イスラエルの戦術に「再調整」はみられないと指摘。ガザ地区各地の病院やモスク、行政施設、学校など、「住宅やそのほかの民間インフラが集中砲火」を浴びているとした。
UNRWAは声明で、「民間インフラを攻撃したり影響を与える攻撃パターンは、イスラエルによる国際人道法の順守への深刻な懸念を抱かせるもので、残虐犯罪の危険性を著しく高めるもの」だと、強い言葉を使って訴えた。
ハマスが運営するガザ地区の保健省は、同地区北部の住民約80万人が医療サービスを受けられない状況だと発表。IDFが「ガザ北部の医療拠点を排除した」としている。
BBCはこうした主張を独自に検証できていない。
イスラエルは、国際法の範囲内で行動していると繰り返し主張し、ハマスが同組織のインフラを住宅地に配置して市民を人間の盾にしていると非難している。さらに多くの民間人が殺害され、生き残った人々の苦しみが悪化する中、IDFの行動は引き続き精査されることになる。
こうした中、イスラエルはガザ地区への「最小限の」燃料搬入を認めることで合意した。同地区南部における「人道状況の崩壊と伝染病の発生を防ぐため」だとしている。
国連事務総長、人道的停戦宣言を要請
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、国連憲章99条を発動し、安全保障理事会に対してガザ地区での人道的停戦を宣言するよう要請した。グテーレス氏が99条を発動したのは、2017年に事務総長に就任して以来初めて。
国連憲章99条は、「事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる」と定めている。
「ガザ地区での人道システムが崩壊する重大な危険に直面しているため、私は(安全保障)理事会に対し、人道的大惨事を回避する手助けを行うことを求めるとともに、人道的停戦を宣言することを要請する」と、グテーレス氏はソーシャルメディアに投稿した。
グテーレス氏は安保理議長宛ての書簡で、ガザ地区の状況は急速に悪化しており、パレスチナ人や同地域全体の安全保障に取り返しのつかない影響をおよぼす可能性があると強調した。
また、ガザ地区の医療システムが崩壊し、病院が戦場と化したことで、「安全な場所はどこにもなく」、民間人を効果的に保護する術も存在しないと指摘。同地区のすべての民間人が重大な危険に直面していると述べた。
避難所も、生き延びるのに必要な必需品もなく、イスラエルの絶え間ない砲撃が続いているとし、「絶望的な状況により、間もなく社会秩序が完全に崩壊し、限定的な人道支援さえも不可能になる」と予想していると、グテーレス氏は書いた。
グテーレス氏は、国際社会には「さらなるエスカレートを防ぎ、この危機を終わらせるためにあらゆる影響力を行使する」責任があるとし、人道的停戦を改めて呼びかけて書簡を締めくくった。
岸田首相、ネタニヤフ首相に民間人被害の最小化求める
日本の岸田文雄首相は6日午後7時30分から約20分間、ネタニヤフ首相と電話で会談した。両首脳の電話会談は、イスラエルとハマスの軍事衝突が始まって以来初めて。
日本外務省によると、岸田氏はネタニヤフ氏に対し、「民間人の犠牲者が増え続けることは避けるべきであり、事態の早期沈静化、民間人の被害の最少化、および国際人道法を含む国際法の遵守が重要」だと伝えた。
これに対し、ネタニヤフ首相から、ガザ地区におけるイスラエルの軍事行動に関するイスラエルの立場について説明があったという。
同省は、両首脳がガザ地区を含む中東情勢について引き続き緊密に意思疎通していくことで一致したとしている。
2023-12-07 04:19:26Z
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